YoshiyaTsuboi

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのYoshiyaTsuboiのレビュー・感想・評価

4.2
「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」を観た。ムーンライト、ビールストリートとA24製作の好きなベクトルのタイプの作品だった。本作は前二作より終始抑制が効いているけど、詩的で寓話的な個人史の繊細な世界観に浸りつつ、かつアメリカ社会が歩んだ現代史の一旦に触れられる。

ほわんとした想いを持ち帰る、小さな物語に浸った心地よさ。なんて言うか、例えるとレイモンド・カーヴァーの短編小説で描かれているようなちょっとしたファンタジックなお話。アメリカ現代文学の良質な乾いた空気感にある心地よい繊細さの彩りというか(いったい何のこっちゃ?な言い草だけど)、とにかく好きだった。ただ一年後に覚えているお話かと言えば、いい意味で忘れている感じ。アメリカ人がペーパーバックで小説を読むような感じって、こういうお話なんではないかなあと想像する。

願わくば英会話がリアルタイムで耳で聞き取り頭で理解できれば、もっと面白いのだろう。字幕では伝わり切らないものが伝わってきた。この人はこういう話し方でこういう言葉のチョイスなんだということがあるのだろう。そのことでドラマの奥行きが広がっている気がした、そこにもっと触れたかった。さらに当然ながらサンフランシスコという街が歩んできた歴史についての知識があれば、より面白く楽しめたのだろう。

最後に「mid90s」「行き止まりの世界に生まれて」に続いて、本作もまたまたアメリカユースカルチャーにとってスケボーが抱える大切な何かが描かれていた。
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