いずみたつや

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのいずみたつやのレビュー・感想・評価

3.9
あまり目にすることのないサンフランシスコの環境汚染、超格差、そのリアルな風景に衝撃を受けました。

特に冒頭の防護服で汚染物を回収する人の横に黒人の少女がいる光景は、普段見慣れている海岸沿いのイメージとは真逆のもので非常にショッキングです。

さらにその語り口が非常に変わっていて、まるで演劇を見ているような構図、セリフまわしで描かれる点がおもしろい。

また、貧困を「汚い服装」といったありがちなモチーフに落とし込んでいないところも新しさを感じました。

本作で描かれるジェントリフィケーションは、日本人にとっても他人事ではありません。渋谷は急速な都市開発により、あっという間に古い店舗や建物が高層ビルへと姿を変え、数年前とまったく別の景色が広がっています。

環境の変化は避けられないものですし、それが一概に悪いことでもありません。この移り変わりの激しい時代を生きる人々にとって、どこにアイデンティティーを見出せばいいのか。そうした苦悩を描いた作品だと思いました。