滝和也

ラストナイト・イン・ソーホーの滝和也のレビュー・感想・評価

4.0
極彩色の光が
霧と雨の街に映し出され
幽玄なるマボロシは
貴女の現実と化す…。

光るナイフ、古き下宿、
密室…淑女に迫る危機…
美しきオマージュと
新鮮なる女優陣に飾られた佳作

「ラストナイト・イン・ソーホー」

ブラックコメディからのし上がってきたエドガー・ライト監督のスタイリッシュなサスペンススリラー。その映像美、音楽のミキシングとセンスが際立つ良作だろう。ありそうでなさそうな微妙なラインのストーリーをスラッシャー・ホラーでなく、サスペンスとして見事に成立させているのがスバラシイ…。

エロイーズは片田舎からロンドンのソーホーにあるファッションの学校に入学した。彼女を育てた祖母は初めての都会に住む孫エリーを心配していた。都会の誘惑や孤独以外にエリーには霊が見えてしまう能力があったからだ。案の定、都会の面子と合わなかった彼女は寮を出て下宿を見つける。古風な部屋は彼女の霊視能力を使わせ、60年代にいたサンディの人生を夢で見させるようになる…。

まず…真面目過ぎる可愛さ溢れる女性と都会の誘惑…その女性を主観とする幻影と悪夢…ポランスキーの反撥へのオマージュかと思い、うわぁ…やばいぞこれはと。サンディとの夢での交合あたりまでで…あぁ案の定スラッシャー・ホラー並のヤバイ話に…所謂性への嫌悪が夢に反映されたかと思っていたら…。

テレンス・スタンプ演じる謎の老人がクローズアップされる当たりから…ヒッチコックのサイコいやデ・パルマのドギツさを加えたスリラーに変転していき、大変スピーディでサスペンス性が高まっていくのがまた見事。クラシックな展開がかなり好み。また過去の幻影と現実が相まったラストが美しく素晴らしい。

この幻影と現実を繋ぐ二人の女優の個性かつ美しさがまた素晴らしい。明らかに二人の演技があってこそ。エリー役のトーマシン・マッケンジーの清楚な可愛らしさ。これ故狂気に染まる極端さが生きてきていましたね。そしてアニャテイラー・ジョイ演じるサンディの妖しげで艶のある美しさ。60年代ファッションもピタリとハマり、堕ちていく危うさも見事に表現されてました。この対象的な二人を正に鏡合わせにして進む前半は幻想の中に取り込まれていきますね。

配役も絶妙で…コレクターやテオレマが代表作のテレンス・スタンプがいたら何かあるとしか…(笑)大家さんもダイアナ・リグって、確かボンドガール中のボンドガール、唯一ジェームス・ボンドと結婚した方ですからね…。他ジャック役の方、60年代そのものだし、エリーに片思いする彼氏も役にあってましたからね…(笑)

霧と雨の街ロンドンの全盛期60年代と現代を美しく極彩色のネオンとライティングで描き出したのは地元の監督らしさなのかなと。灰色と黒のダークさは外から見てる僕らのイメージでしょうし。60年代の方が綺羅びやかだったりするのは憧れもあるんでしょうか(^_^)

サスペンススリラーやミステリーが好きな私には前半苦手でしたが、後半のクラシック的な流れは非常に好感が持てる内容でした。過去作へのオマージュも見事。女優の美しさをフルに出し活かすのもヒッチコックのようで素晴らしかった。これはオススメです。
滝和也

滝和也