エイデン

アガサのエイデンのレビュー・感想・評価

アガサ(2018年製作の映画)
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1957年10月、ジョージア州
若い妊婦メアリーは、過去から逃げるように様々な場所を渡り歩き、ある女子修道院で保護してもらうこととなる
修道院長や修道女のポーラに迎えられたメアリーは、早速ここのルールを教えられていく
それは過去と決別するため私物を預けることや、沈黙の掟により必要最低限のこと以外話さないことなど、祈りと労働に明け暮れた厳しいものばかりだった
現にその厳しさゆえ、ローマ教会に認可を取り消され援助金を止められてしまっており、寄付だけで運営をまかなっていると修道院長はこぼす
そこには知恵が足りないサラや、脚の悪いドリスなど、メアリーと同じく訳ありの女性たちが保護されており、慎ましい生活を送っていた
最後に最近泥棒が入ったため戸締りに気をつけるよう言われたメアリーは、休んだほうが良いと部屋へ案内される
部屋には同室のキャサリンがおり、彼女はいつでも自分に話しかけていいと言う
しかし外から盗み聞きしていることがあるため小声で話すよう注意される
話していることが知られてしまったヴェロニカという女性は捕まり、そのまま帰って来ることはなかったと聞き、メアリーは不審に思うのだった
新たな生活を始めるメアリーだったが、やがて彼女は修道院の秘密に触れていく



闇深い修道院の秘密に触れていくスリラー映画

いかにも秘密がありそうな修道院には秘密があった!
閉塞的で不気味な雰囲気の中、徐々に明らかになる異常性
ややテンポは遅めだけど、明かされていくヤバさも想像以上にパンチがあって、良質なスリルを提供してくれる

『ダ・ヴィンチ・コード』で主人公のラングドン教授が、死体の血と肉を模したものを食べ、その持ち主の死体を掲げて崇める宗教が存在していて、その名をキリスト教と言うみたいな説明をしていたのを何となく思い出す
まあ別にキリスト教に限らず宗教の世界ってやはり異質で、それを信じている人も少なからず日常とは違った世界に生きているのだと思う
本作も内容としてはそうした異世界へ入ってしまったような錯覚に陥るほど、修道院内での厳格なルールや価値観に晒され、日常とのギャップが異質さや恐怖を生み出す要因になっているように感じた

その異世界っていう表現を使う理由の1つがタイトルにもなってるアガサという名前
作中では主人公が名乗るように教養される洗礼名として登場するけど、名前を変えることも異世界に生きることを証明するような行為なのかな
『千と千尋の神隠し』の展開やSNSでアカウント名を付けることにも似てる
ちなみに原題は『St.Agatha』(=聖アガサ)なので、シチリアの聖アガタの伝説を元にしているのかな
美人だったことから権力者に目を付けられたもののその意に従わず、キリスト教徒であることを口実に拷問されたという伝説がある人物だけど、加害側がキリスト教徒っていう本作はかなり皮肉だけど

キリスト教の価値観に加えて、宗教や修道院への畏怖的な感情から来る不気味さが元になってるので、やや理解しにくい場面もあるかな
まあ間違いなく正義だろうと思って助けを求めた先が、実はカルトのヤバい集まりだったくらいの感覚で観ると、怖さも1割り増しくらいには思えるかも
それはそれとして、エンジンかかると割と面白い作品なので観ましょう
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