千年女優

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいの千年女優のレビュー・感想・評価

4.0
幼少期に受けた父親からの虐待の影響でささいなきっかけでも暴力的な行動を取る九歳の少女で、女手一つで三人を育てる母親はもちろん様々な場所で手に負えずに施設を転々とするベニー。制御不能で「システムクラッシャー」のレッテルを張られる彼女が、新しい施設でトレーナーのミヒャから隔離療法を受ける様を描いたドラマ映画です。

ドイツ人の女性監督でバーデン=ヴュルテンベルク・フィルム・アカデミーで舞台美術を学んだノラ・フィングシャイトが、ドキュメンタリ映画撮影時に出会った女性をモチーフに制作した2019年公開の作品で、第69回ベルリン国際映画祭で金熊賞を獲得してアカデミー賞のドイツ代表に選出されるなど批評家を中心に高い評価を獲得しました。

芥川賞作家・今村夏子の小説を原作とする『こちらあみ子』にも通じるテーマを持った作品で、一人の「問題児」を通して現代社会が謳う「ダイバーシティ」の陰で蓋をされた「臭いもの」を描きます。多様性があたかもマジョリティがマイノリティを「許す」ものかのように振る舞われる昨今、その驕りにある浅ましさを痛感させる一作です。
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