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フォードvsフェラーリのsueのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.0
かねてから私を悩ませる「アメリカ映画、脇見運転長過ぎ問題」
一旦これが始まってしまうと思考がひたすら「前見て前見て危ないから!」に支配されてしまいセリフもストーリーも入ってこない。

この映画でも不遇のレーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)の奥さんがゴリゴリの脇見暴走運転をかますけど、この方はチョイチョイ前方確認するだけまだマシ。

「人と話すときは目を見なさい」って指導が徹底されている国かも知れんが、運転中だけは前を向いていてほしい。

なんの話だっけ。

そう「フォードVSフェラーリ」
今年は観たい映画が多過ぎて、後回しにしてた本作をようやく鑑賞。

ジェームス・マンゴールド監督の無節操なフィルモグラフィにまた1本傑作が増えたなと思いました。

アンジェリーナ・ジョリーやリース・ウィザースプーンにオスカーを獲らせる等、役者の演技力を引き出すのも上手く、人間ドラマにアクション、サスペンス、コメディ、ラブストーリーなんでもござれの守備範囲。脚本も書けるのに作家というよりは職人気質のマンゴールド監督。
ここ最近の仕事ぶりは安定感抜群。手掛けた作品が賞レースに絡んでくるのがなんか普通になってきた。

今回も迫力のレース場面もさる事ながら、男くさい人間ドラマで2時間30分グイグイ引っ張っていく。

クリスチャン・ベイルの相変わらずのなりきり熱演、それをがっちり受け止めるマット・デイモンの佇まいも良い。
僕の妻にとってはいつまで経っても「ウォーキング・デッドのアイツ」ことジョン・バーンサルも出ていて、今回はフォードの重役連中の中で唯一主人公コンビの生き様に魅了されていく男を静かに熱く演じてコレまた良い。

ライバルのフェラーリは威風堂々としたプロフェッショナルに描かれているのに、主役側であるはずのフォード社の背広組は何にもわかってないビジネスパーソンにされており、よくフォード許可したな、日本だったらそれっぽい架空の企業名に無理矢理変えちゃうんじゃないか、と感心した。こういうとこ忖度不要の国っていいな。

ケン・マイルズを支える妻子の描写がまた素晴らしい。
特にマイルズの一人息子(ノア・ジュブ君が好演)の父を見つめる眼差しが、愛と尊敬に充ちていて、傍にいて父をなんとかサポートしようと努めるその姿に泣ける。
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