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ある船頭の話の六のレビュー・感想・評価

ある船頭の話(2019年製作の映画)
3.5
川の渡しをする船頭の日常、前半はほぼそれだけ
なのだが、いくらでも見てられる
サタンタンゴくらい長くても見れたと思う
まあケツが耐えれんだろうが

NHKのドキュメント72時間好きな人は見てて楽しいかと
ただ有名俳優過多かなとも感じた
「おっ、この人も出てるんだ」と一瞬思考が物語から現実に戻ってしまった
その辺りがちょっともったいない気もしたけど
そこはドキュメンタリーではなく映画作品なので仕方がない
そして物語は思ってたより複雑、何を思うかはそれぞれ違うかと

時代の流れにはじかれた人間の感情の揺れ
どんな善人でも持っている醜悪な部分
時代も人も風によって穏やかにも激しくも変わる
自分はそんなものを見た

何かしら世の中の役に立っている
そう思えることは人間が生きる上で大きい
誰かに必要とされることで自分の存在意義が生まれる

世の中どんどん便利に、一方で世の中から消える人や物もある
この船頭も自分の火が消えるのを待つだけだった
そんなある日風が吹く、真っ赤な風が

ラストの新たな風に吹かれ川に漕ぎ出したシーン
「お~~~」と(心で)唸った
トイチの表情が晴れ晴れとしてたから
鬱蒼としたブルーな展開なのにあの表情とは
フウという存在意義を見つけ、新たな人生に漕ぎ出すトイチの気持ちが伝わるシーンだった

前半、ゆっくりした時間の流れを見せ
中盤、なにやら不穏な展開を予感させ
もはや船頭としての命も風前の灯火
かと思わせといてのラストシーン、、素晴らしい流れかと
やるな〜オダギリジョー

有名人が監督したものは「?」なものが多いので
これももしやと思って見に行ったが
ちゃんとした映画だった、ってのは失礼な言い方だけど、、、
いやほんと観に行って良かった
スタッフ、キャストの力も大きいけど
この映画が成立してるのは紛れもなく監督の才能でしょう
劇場を出ても余韻が残る好き系な映画でした。



舞台挨拶の回だったので終演後にご本人の話を聞けた
オダギリジョー (シュッとしてたなぁ)
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