まぐらいだあ

ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONーのまぐらいだあのレビュー・感想・評価

2.7
福島県白河市のご当地ヒーローであるダルライザーを映画化した作品。

東映ヒーロー(ライダー、戦隊)には東映ヒーロー、ご当地ヒーロー(マブヤー)にはご当地ヒーローとしてのスケールと言う名の予算が存在するが、今作はスケール感は適度に、見せ方は低予算ながらうまく出来上がっている。

メインは主人公の人間ドラマにおいてヒーローとしての側面をどう葛藤させていくかが見ものではあるのだが……

いかんせんヒーローとしての信念みたいなのがまったく活かされていない。
ただの成り行きでヒーローとしての役割を担ってしまっている。成り行きとはいわば巻き込まれ型という意味ではいいのだが、成り行きという部分をそのままにして、結局なぜダルライザーとして戦うのか、ダルライザーとして戦うとはどういうことなのかが描かれていない。
つまり「正義」のあり方がどこを向いているのかがわからない。正義の反対が別の正義であるように、
今作の敵組織である「ダイス」には己の信念のために自らの正義を行使するのだが、一方でダルライザーにおいての信念がまったく見えてこないのが致命傷で、ヒーロー映画なのにまっっっっっっったくもって、ヒーローとは呼べない映画になっている。

「ケイジ」という格闘術を推しているわりには戦闘シーンも少なく、その分主人公のドラマにフォーカスしているが、正直つまらない。

主人公は妻の妊娠をキッカケに故郷である白河に帰ってくる。
実家はお金持ちでいくつものホテルを経営する社長の父がいる。
父は、息子にそれなりのポストを用意するが、主人公はそれを拒否する。
役者の夢を持っていて、おそらくそれを反対する父から逃げるように去っていったのだろうが、夢を諦めていないならなぜ帰ってきたのか?
反対を押し切って出て行ったが、甘える部分は甘えるだが、父の用意した就職先にはいかない主人公の甘さと中途半端さを描写しているのだろうが、それが特に活かされてたりしないただの設定になっている。

しかも、ダルライザーを思いつく動機がキャラクターコンテストに応募するためと意味がわからない。賞金目当てで家族を養うためとかならまだ理解できるが、お金がない設定のくせになぜか金のかかるコスチュームを作るのはもっと意味がわからない。
そもそも主人公は演劇の世界の人間であって、ヒーローショーの人間ではない。のにもかかわらず、ヒーローショーの住人になって夢を叶えられると言っている。
序盤の演劇シーンでよくわからないヒーローを演じていたが、それは演劇という中身に出てくるヒーローであって、ヒーローショーという演劇をやっているわけではない。この部分に結局主人公のやりたいことがあやふやになっている。

別にアクションがどうだの、ビームがでないだの、予算がどうだのとは言わないが、最低限、脚本という部分でもっと面白くできるはずなのに、オリジナリティもなければ、どっかのSF作品を適当にとってつけた雑脚本に仕上がっているのが腹ただしい。

これはヒーローショーじゃなく映画である。ダルライザーのキャラクター販促の面では成功かもしれないが、いちヒーロー映画としての役割は失敗である。