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キングスマン:ファースト・エージェントのYYamadaのレビュー・感想・評価

4.0
【スパイ映画のススメ】 キングスマン③
〈諜報員〉
🇬🇧独立諜報機関「キングスマン」所属
・オーランド・オックスフォード公爵
・コンラッド・オックスフォード
 
◆作品名:
キングスマン:ファースト・エージェント
(2021)
◆ミッション:
第一次世界大戦の阻止
◆敵役俳優
・リス・エバンス、
・ダニエル・ブリュール

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1914年、世界大戦を裏でひそかに操る闇の組織に対し、英国貴族のオックスフォード公と息子のコンラッドが立ち向かう。
・人類破滅へのカウントダウンが迫るなか、彼らは仲間たちとともに闇の組織を打倒し、戦争を止めるために奔走する…。

〈見処〉
①敵は我々を只の紳士と思っている…
 シリーズ待望の前日譚!
・『キングスマン:ファースト・エージェント』は、2021年に製作されたスパイ・アクション『キングスマン』シリーズ3作目。
・国家に属さない秘密結社である彼らの最初の任務は、世界大戦を終わらせることだった…。第1次世界大戦を背景に、表向きは高級紳士服テーラーだが実は世界最強のスパイ組織「キングスマン」誕生の秘話を描く。
・主人公のオックスフォード公を演じるのは、『ハリー・ポッター』シリーズのヴォルデモートで知られる、名優レイフ・ファインズ。『マレフィセント2』の新鋭ハリス・ディキンソンがその息子のコンラッドを、彼らの前に立ちふさがる怪僧ラスプーチンに個性派俳優のリス・エバンスが演じている。
・監督・脚本・製作は、シリーズ全作を手がけるマシュー・ボーン。

②延期の連続
・本作は、2017年秋に前作『キングスマン:ゴールデン・サークル』の公開を待たず、シリーズの脚本を手掛けるマシュー・ヴォーンとジェーン・ゴールドマンによるシリーズ第3作の企画化を開始。
・当初は「ドウェイン・ジョンソンを悪役起用した続編」や「チャニング・テイタム扮するテキーラを主人公に据えたステイツマンのスピンオフ」も視野に入れていたが、前作エンディングにて「これで終わりではない、ましてや終わりの始まりでもない。あるいは始まりの終わりなのかもしれない」と第二次大戦下の英国チャーチル首相の有名なスピーチをキングスマン創設者の一人の発言を取り上げているように、キングスマン創設に関するエピソード構想はかなり以前からあったようだ。
・当初は2019年11月の全米公開を予定していた本作であるが、配給の20世紀フォックスがウォルト・ディズニーの買収影響を受け、1年の公開延期が決定。
・さらに、2020年9月公開の予定も、新型コロナのパンデミック影響にて、2021年2月→3月→8月と幾度も繰り返される延期の果てに2021年12月の公開を迎えている。
・ディズニーは『ブラック・ウィドウ』公開時にネット有料配信を強硬し、日米ともに大手劇場チェーンと軋轢を残したが、以降の公開作品に適用している「公開から45日間は劇場独占」する方針を表面している。ディズニー+の配信は2月?

③史実とフィクションの組み合わせ
・第一次世界大戦下の1914年を描く本作。実在の人物の背景を押えておくと、鑑賞時の理解度が増すのは間違いない。
・本作のボスキャラである「ロシアの道鏡」こと、不死身の怪僧ラスプーチンは、実在の人物。「スピリチュアル・アドバイザー」として、ロシア皇帝ニコライ2世の宮廷で実権を握り、皇后でさえも虜にして、戦争遂行のために非道な方法で歴史を操っていく。
・「皇太子の血友病を催眠療法で治した」「青酸カリも銃撃でも鉄棒による殴打でも死なない」など数々の逸話を残しているラスプーチンであるが、本作では驚くべき戦闘力でキングスマンを翻ろうするシーンは、本作の最大の見どころのひとつ。
・本作で交戦中の国家元首であるイギリス国王ジョージⅤ世、ドイツ皇帝ヴィルヘルムⅡ世)、ロシア皇帝ニコライⅡ世は、イギリスのビクトリア女王の孫にあたるいとこ同士。性格がバラバラの3人の国家元首を本作では、名バイプレーヤー俳優のトム・ホランダーが一人三役を演じている。
・キングスマンたちと対峙する「闇の狂団」に所属し、アメリカ大統領を翻弄したのは、世界一有名な実在の女性スパイ、マタ・ハリ。

④結び…本作の見処は?
思いのほかエモーショナル
◎: 史実とフィクションを組み合わせたストーリー展開は、マシュー・ボーン監督が手掛けた『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』と同じ構図。実在の人物の逸話を反映させたストーリー展開はユニークで、とくに容姿がそっくりなラスプーチンの怪僧ぶりは、印象的である。ミドル・クレジットでは、誰もが知る実在の人物も登場。
◎: ただのアクション娯楽映画だけではない「反戦メッセージ」「父と子の家族愛」を含む展開を見せている。『1917 命をかけた伝令』を想起させる交戦中の塹壕突破シーンでは戦争の悲惨さを伝え、中盤にレイフ・ファインズが演じるオックスフォード公が再起するシーンは胸が熱くなる。
○: レイフ・ファインズ、ジャイモン・フンスー、ジェマ・アータートンの3人による初代キングスマンのキャラクターは本作だけで終わらすのは勿体ない。マシュー・ボーン監督が途中降板した『X-MEN:フューチャーパスト』のような新旧キャラクターの継続登用を期待したい。
○: アクションシーンは多くはないものの、ラスプーチンとの格闘や飛行機からの脱出シーンは、前2作に劣らない迫力を維持。
▲: オックスフォードの息子コンラッドに扮するハリス・ディキンソンのキャラクターがおとなしめ。彼のパートが中心の前半部に停滞感あり。
▲: 国家元首3人を1人で演じるトム・ホランダー。キャラクターが違うとはいえ、「これは誰だっけ」と考えながらの鑑賞が少々ややこしい。
▲:前2作との関連性は「紳士洋装店」や「オックスフォード公邸」、前作に登場したセリフやコードネームに留まる。前作キャストの登場を期待しただけに、少々物足りなさが残る。

作風の違いから、前2作の「続編」ではなく「スピンオフ」の別作品として鑑賞したほうが良い。
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