KenzOasis

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのKenzOasisのレビュー・感想・評価

4.5
「インスリン」

油田を掘り当て、大金持ちになったネイティブアメリカンの部族とともに暮らす叔父を頼り、オクラホマへやってきた男が、莫大な資産をめぐる「殺人事件」に巻き込まれていく。

人類の歴史に争いは付きものだが、個人的に、アメリカの近代史における暴力はとことん濃密だと思う。
この映画はその暴力の嫌なところがめちゃくちゃ練り込まれてて、3時間半という長さを感じさせない。シンプルにここがすごい。
スコセッシ監督はいつまで名作を出し続けるのか。

僕はもう序盤の、部族のネイティブな祈りのシーン→油田フィーバー→
♪Osage Oil Boomがかかったところで心が鷲掴みにされてまして、なんてかっこ良いイントロなんだ!と思った。原始的なビートが根底にありつつも、近代的なギターリフが光る名曲ですね。

作りとしてはなかなか、「グッドフェローズ」に似ている。ググッとテンポの速いカットもあれば、長いカットもあったり。オジキのロバート・デ・ニーロがいて、世話を受けつつ突っ走る若者のディカプリオがいる。いくつかのモノローグ、そして裁判。やたらに家族を大事にするけど打算的。言うなればオクラホマ・マフィア映画だ。

いずれも最高の演技で、この物語の醜悪さと愚かさを見事に表情で語り散らかしていた。
ほんとうに、ディカプリオのこの愚か者感の演技のすごさ。「こいつマジか?」って何度思ったことか……終盤は滑稽すぎて笑ってしまうけど、そのくらい、思慮の格差が恐ろしいほどよく出ている。

欲が先行してしまう思考のくせに、なぜか確かに愛しているという矛盾が憐れな男。

3時間超えさせた気合いの入り方、映画館で観る価値しかなくてさすがでした。
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