垂直落下式サミング

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.5
人為で自然は制御できない。それ以外の着地点なんてないのに、資本主義というDNAに支配され、延々と離陸を繰り返すしかないのは、はるか7500万年前の浄土へはせる思考実験。ジュラシックシリーズは、作り手側の修行をみせられるようなストーリーになっていった。
いろんな型破りを持て余しに持て余して、最後は計画倒産もやむなしか。一作目の貯金も底をつきそうな、コロナ跨ぎのジュラシックワールドである。
ハリウッドブロックバスター興業の王道を貫いたスピルバーグフランチャイズも潮目ってなわけで、ここいらで店仕舞いだろうなと。そんな作り手の事情も透けて見えてくる作品だった。
一作目の時点で、敵にキメラ恐竜を登場させたことに弱冠の掟破り感はあったが、マイケル・クライトンの原作の恐竜たちは、太古の生物ではなく遺伝子操作によって生まれた最新科学の生命体であるため、この施策は原点回帰的とも言える。
自分の楽しみのために他の生き物の命を奪うインドミナスレックスの絵的なインパクトは絶大であったし、最後には人為によって操作された生命が自然界の正統捕食者によって討伐されることで、シリーズが一貫してきた自然第一主義や科学万能論への否定がメッセージとして担保されていたように思う。
その一方で、二作目は世界観の拡張を狙った型破りが目的化してしまっていた。恐竜たちの救出と解放、クローン少女、家族愛、ゴシックホラー、必要以上にたくさんの新要素を持て余していて、そのほとんどに納得のいく答えを用意してくれていなかったため、公開前から僕の不安はつのるばかり。中継ぎの失点が、当然ながら続編の展開に大いに影をおとしている。
現代になだれ込む恐竜たち。食われる人類。大いなるものとの対立か共存か。2018年の時点では、ここに語るべきテーマがあった。
しかし、今はどうだろう。恐竜が闊歩する現代は、あまりにも醜悪。公害に汚染されたこの世に、無慈悲に放り出された恐竜たち。そのような図式には悲哀しか感じられない。
恐竜が生きていられるのは、地球温暖化によってもたらされた温暖な気候によってここそ。ここをもって、エコロジーのあり方に一石投じていると言えなくもないが、だとしたら森林破壊によって酸素濃度が薄くなった現代においては、巨大生命体が生命を維持できるのかと、また別の疑問符が沸き上がってくるべきではないだろうか。
恐竜は怪獣ではなくて、あくまでも動物なわけですから、そこんところちゃんとしてほしかったですね。羽毛のやつとか出てきて嬉しかったけどね。
いちばん残念だったのは、ギガノトサウルスの扱い。こいつは最初ただお昼寝してただけで、しかも劇中で誰も殺してないのに、最後「悪は滅びる!」みたいなテンションで殺されるのは意味わかんない。しかも、2対1だし。
誰か一人ぐらいギガノトサウルスに食われてたら、はなしも変わってきただろうに…。重要人物たちが、物語の都合で安全プロテクトされてるのが顕著。事件の中心にいてガンガン襲われるのに毎回生き延び続けるから、どうせみんな生き残るんでしょうと、画面上のストーリーを追いかける集中力が減退していってしまった。
1作目は誰彼構わず食われて死ぬのがショッキングでスリリングだったけれど、ワールドからはクリス・プラットみたいな陽キャ過ぎるやつを主役にしてしまったことで、スラッシャーとして機能しなくなってしまっている。これが、いちばん問題かも。
それでも、前作から出ていたジェフ・ゴールドブラムをはじめとしたオリジナルメンバー達が新世代組と並んだときは、それなりに見応えしたのも事実。今作では、ついにサム・ニールとローラ・ダーンも参加。三人並んだときに、あのテーマソングがうっすら流れる。最高。やっぱり1が大好きなんだな。
前作の最後で、恐竜かわいそうだって逃がしてた戦犯のクローン少女については、ステレオタイプな反抗期娘過ぎて、あんま気に入ってなかったんだけど、彼女の出自について明かされる展開は、僕は好意的に受けとりました。
遺伝子研究とか共存とか人類とか地球とか、そんな規模の大きなこと考えてなくても、病気せず苦労せずに我が子よ健康に人成ってくれと、手の届く範囲の幸せを願っているだけで、もう我々は大丈夫だよって、そういうわけさ。わかるかな。
いなごの終末論と二重らせん構造の隠し味は、小匙イッパイの楽観主義。そんな家族愛の物語。それでいいじゃあありませんか。ここをもって、未来への希望をみせる進歩的な映画とすることができると、そう締め括るのは力業だろうか?
ジュラシックワールド3の着地点は、ハードSFには似つかわしくない柔らかいものでしたが、この巨大プロジェクトをどうにかこうにか軟着陸できたんだし、たいしたもんだと思います。ま、いーんじゃないですか。超おすすめですよ(・∀・)v