ミミック

風の向こうへのミミックのレビュー・感想・評価

風の向こうへ(2018年製作の映画)
3.0
全裸の女が挑発するアートな無言劇「風の向こうへ」も、それを作る映画スタッフに関する話も、そのスタッフに群がるマスコミの話も、それらはあくまで個別の撮影素材の一つでしかなく、監督が編集によってどのように繋ぎ新たな解釈を持たせてメッセージを浮かび上がらせるかが肝の部分なので、別の人が編集した今作をオーソン・ウェルズの監督作と銘打つのは甚だ疑問。

何層ものレイヤー構造も機能的ではないし、この作品で伝えたいことが何かが分からないので最後まで見るのはしんどい。バックで薄くかかる音楽もなんの意味も見いだせない。

劇中劇のカットはどれも気合い入ってた。『オーソン・ウェルズのフェイク』を見てると、現実と虚構とか、騙す騙されるの関係とか、自分の状況を劇中の人物に重ねたりといったオーソンやりたいことが何となく解る。

バンクシーの『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』で例えると、今作はティエリーが作った映像作品。この映画を見るより、これに取り組むオーソン自身に迫った『オーソン・ウェルズが遺したもの』を繰り返し見た方が余程本質に迫れると思う。
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