NAOKI

メランコリックのNAOKIのレビュー・感想・評価

メランコリック(2018年製作の映画)
3.9
これは…

これは日本の「レザボア・ドッグス」だぜ!

おれは思わず興奮してリュウノスケにそう言った。
「なんすか?レザ…レザ…ボアド?」

リュウノスケはこの映画に出てくるマツモトみたいに頭を金髪にしてる若くてアホでチャラくてなぜかやたらとおれに懐いてくる若造だ。

リュウノスケは「おれも映画好きっす」とかおれに言うくせに…映画のこと何にも知らない…タランティーノもスピルバーグもライアン・ゴズリングも知らなかったんだ。

そんなリュウノスケが先日…
「先輩!こないだ「メランコリック」って映画観たんすけどめっちゃ面白かったっすよ」
…とか言うんですよ。

「お前がラース・フォン・トリアーかよ!どうした?」
「なんすかそれ?日本映画っすよ…銭湯で人殺すやつ」
「そうか…あれはメランコリアか…銭湯?あぁTSUTAYAでパッケージ見た気がするな…面白いのか?」

知らない監督だと思ったら長編第一作目みたいだし出てる人たち見事に誰一人知らない…ほんとにこの映画が面白いのか?半信半疑でレンタルしてみた。

その昔…おれがガキの頃…「四畳半フォーク」って言葉があったんですよ。
もともとフォークムーブメントは海外からやってきた…例えば警官隊が向ける銃口に一輪の花を挿したり、貨物列車の屋根に無賃乗車して大陸を放浪したり…反体制のメッセージ・ソングに海外の若者たちは熱狂したんだ。
そのムーブメントは日本にもやってきたがどうにもこのメッセージが日本人にはしっくりこない…そこで日本の歌唄いたちはこのフォークを見事に日本流にアレンジしてみせた。

金がないから下宿でキャベツをかじってみたり…髪が肩まで伸びたら結婚しようと言ってみたり…黒い鞄ぶら下げてるだけでおまわりに職務質問されてムカついたぜ…とか(笑)それは「四畳半フォーク」と呼ばれておれらは夢中になったもんです。

この「メランコリック」
もう主役の彼を映画の終わりまでに好きになれるか?自信ねーなーって感じで始まるんですが…
どんどん後半に向けて面白くなるんですよ…これが!

すごいすごい!まさにこれは「四畳半クライム・サスペンス」!
初めてタランティーノの「レザボア・ドッグス」
をみた時の衝撃を思い出しました。

これはすげえ。
日本ならこれくらいのスケールがピッタシ来るんだよなぁ…
当たり前に観てるハリウッド製のクライム・サスペンスをこんなに見事に邦画に落とし込むなんて!

「お母さんただいま!ちょっと助けて!」(笑)

全く知らない出演者たち…知らないせいもあって全く筋が読めず展開が読めなくて面白い!監督の演出も見事にリアルで…この監督や出演者たちを知ってしまったことが残念になるくらいの面白さ…

観終わった後のあの気持ち…全く想定外でした…素晴らしい!

「今まで食ったうどんの中で一番美味かったっす」
マツモトのこのセリフでおれは泣いてしまいました(笑)

さて…でかした!リュウノスケ!

だけど暇さえあれば映画をいっぱい観て知識を一生懸命入れて分析して映画通を気取っているおれと…なんにも知らないのに動物的勘でこの「メランコリック」みたいな映画を見つけてくるリュウノスケ…

どっちが映画ファンとして優れているんだろう?
おれはちょっと凹みました。

まさにこの映画のカズヒコがマツモトに嫉妬するあの気持ち…
おれもリュウノスケを見習おう(笑)

この映画…邦画の新しい光だぜ
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