てるる

シティ・オブ・ジョイ ~世界を変える真実の声~のてるるのレビュー・感想・評価

4.2
「シティ・オブ・ジョイ」のタイトル繋がりで観たネトフリのドキュメンタリー。

コンゴで長く続く内紛。
その裏では何十万という女性がレイプされ、殺されている。
生き残った被害女性達を支援する施設「シティ・オブ・ジョイ」の活動を追う。

今日本で公開中の「ムクウェゲ 女性にとって世界最悪の場所で闘う医師」のムクウェゲ医師も出てきます。

そして奇しくも、今日本でもトピックとなっている性被害に関する映画でもある。

コンゴの近代史を知っていると、このドキュメンタリーをより深く理解出来る。
詳しくは最後に。

とにかくコンゴで行われる数々の残虐なレイプは、肉欲だけではなく「戦争の武器」とされている。

コンゴはアフリカの中でも有数の広さと鉱物資源が豊富な国。
その鉱物はPCやスマホに必要なもので世界に向けて高く売れる。

その鉱山や資源が採れる地域で村への襲撃とレイプが多発していることから、人々を追い出すための手段となっていることが分かる。

しかもとても人間とは思えない残虐な行為が今も行われていることが分かる。

だから生き残ってシティ・オブ・ジョイにやってきた女性たちは瀕死であったり、精神的にも絶望に打ちひしがれている。

でもムクウェゲ医師の医療や、同じ経験をしてきたスタッフや仲間達と徹底的に話すことで生きる力を取り戻していく。

レイプは「魂の殺人」と言われるけれど、いわばそれは死から甦るくらいの凄いこと。
もちろんトラウマは完全には消えないだろうし、完璧に戻ることはないだろう。

それでも生きて、幸せになる。
一生不幸でいる必要なんてない。
その姿は涙無しには見られない。

そしてこれは先進国といわれる我々にも関係してくる。
映画に出てくる数々の日本企業の名前に胸が苦しくなった。

もちろん日本企業が直接民兵を雇って残虐な行為をやらせているわけじゃない。
でもそういった行為の延長で得られた鉱物を買っているのである。

日本もどんどん貧しい国に落ちぶれて、他人を構う余裕が無くなってきているけど、我々が使用している機器の部品がどこで、どうやって得られたものかのか知っておくべきなのではないか。

そして程度の違いはあれ、日本でも力によるレイプ、性加害を加えている、加えていたクソ野郎ども。
お前らがやっていることはコンゴの民兵と何ら変わらないことを知れ!

【余談】
コンゴは元々ベルギーの植民地で、しかも国王レオポルド2世の私有地扱いだった。
私有地だからと好き放題やったレオポルド2世により、残虐な行為が行われていたという。

そして一部の氏族に武器を与え、彼らを子飼いにすることで支配を強めた。
その武器を与えられたコンゴの人々がまた、コンゴ人に残虐行為を働いたのである。

その後、それらの行為が世界的な批判を浴びて私有地から国に移譲、更には欧米が植民地支配を諦めていく流れでコンゴも独立。

しかしコンゴの権力争い、資源争いにより動乱に見舞われ、更に2度の内戦が勃発。
それは表向きは植民地支配を止めた欧米による代理戦争でもあった。

その内幕を描いた作品で「ルムンバの叫び」、その調停しようとしたハマーショルドの死に迫る「誰がハマー・ショルドを殺したか」などの映画があるので、興味のある方はどうぞ。
てるる

てるる