朝田

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語の朝田のレビュー・感想・評価

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傑作。所謂フェミニズム映画と単純に一言で括るのは惜しい程、普遍的な瑞々しさに満ちた物語。登場人物たちの「マイライフ」についての物語であると同時に誰しもが経験する青春の終わりについて描いた、言わば「アワー・ライフ」についての物語だ。少女特有の苦悩を描きつつ、人生の過去と現在を画面の質感の違いまで含めて常に対比させていく事で凡庸なガールズムービーに着地させず開けた仕上がりになっている。同じ古典のリメイク映画であるソフィアコッポラの「マリーアントワネット」などとはハッキリ言って志の高さが違うという訳だ。「レディバード」でも印象的だった情感を断ち切るようにバッサリ移り変わっていくスピーディーなカット割りは健在。それが今作では単にテンポの良さ、視覚的な気持ちよさに貢献しているだけではなく、主題となる青春が一瞬に過ぎ去ってしまう儚さとリンクしており素晴らしい効果を上げている。また、この作品が素晴らしいのは衣装やセットなど細部まで精密に作り込まれている一方で、自由に役者に演技させている事で何処までも解放的な空気が流れている点だ。キューブリック的な美学に基づいて、世界観を作り込みすぎると余白が無くなり息苦しくなってしまう嫌いがある。しかしこの作品は役者を信頼した作りになっており、特に反復される家の中で少女たちが会話したり喧嘩をしたりするシーンはまるで本物の姉妹かのように見える。「顔のショット」で始まり「顔のショット」で終わる映画という意味でもあくまでこの作品は役者の映画である。ティモシー・シャラメの告白シーンなんかも忘れ難い生々しさだ。このバランス感覚は元女優グレタガーウィグにしか生み出せなかったものであろう。二作目にしてここまでの作品が撮れてしまうグレタの監督としての才能はとんでもないと思われる。新たな名監督の誕生を祝福するパーソナルにして普遍的な傑作。あとどうでも良いけど前情報をそんなに入れず見に行ったのでパパ役でフツーにソウル・グッドマンが出てきたのは笑った
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