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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【ヒューマンドラマのススメ】
 ~映画を通じて人生を学ぶ

◆作品名:
ストーリー・オブ・マイライフ/
 わたしの若草物語 (2019)
◆主人公たちのポジション
南北戦争時代に生きる4姉妹
◆該当する人間感情 (24種の感情より)
 好奇心、悲観、積極性

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・南北戦争時代に力強く生きるマーチ家の4姉妹。しっかり者の長女メグ、活発で信念を曲げない次女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこく頑固な末っ子エイミー。女性が表現者として成功することが難しい時代に、ジョーは作家になる夢を一途に追い続けていた。
・性別によって決められてしまう人生を乗り越えようと、思いを寄せる隣家の青年ローリーからのプロポーズにも応じず、自分が信じる道を突き進むジョーだったが…。

〈見処〉
①今日も「自分らしく」を連れて行く。
 彼女の恋は「若草物語」で綴られる—
・『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(原題: Little Women)は、2019年に製作されたドラマ映画。
・本作は『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンが再タッグを組み、ルイーザ・メイ・オルコットが1868年に発表した名作小説『若草物語』を、作家志望の次女ジョーの視点にしたみずみずしいタッチで映画化したもの。
・共演は、ローリーを『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ、長女メグを『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソン、末っ子エイミーを『ミッドサマー』のフローレンス・ピュー、4姉妹の母をローラ・ダーン、伯母をメリル・ストリープが演じるなど豪華キャストが集結。
・第92回アカデミー賞では、主演女優賞(シアーシャ・ローナン)、助演女優賞(フローレンス・ピュー)、脚色賞、作曲賞、衣装デザイン賞の6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。

②スター女優の登竜門
アメリカの古典小説『若草物語』は、本作を含め、TVドラマを除き、計4度の映画化がされているが、いずれも時代を代表するトップ女優が二女ジョーを演じるなど、若手女優の「登竜門」となっている。

❶『若草物語』1933年
  (第6回アカデミー賞:脚色賞)
・アカデミー賞史上、唯一の「オスカー4度の受賞女優」キャサリン・ヘプバーン(当時26歳)が、主人公ジョーを演じる。
◆監督:ジョージ・キューカー
◆キャスト
・ジョー(キャサリン・ヘプバーン)
・エイミー(ジョーン・ベネット)
・メグ(フランシス・ディー)
・ベス(ジーン・パーカー)

❷『若草物語』1949年
・テクニカラーによるリメイク
・ジョー役のジューン・アリソンは、1940–50年代のトップ女優
・原作では四女のエイミーが、本作では三女とし、当時17歳だった若きエリザベス・テイラーをキャスティング。
◆監督:マーヴィン・ルロイ
◆キャスト :
・ジョー(ジューン・アリソン)
・エイミー(エリザベス・テイラー)
・メグ(ジャネット・リー)
・ベス(マーガレット・オブライエン)

❸『若草物語』(1994)
・映画公開時23歳の若手人気女優ウィノナ・ライダーをジョー役にキャスティング。
・女性の社会進出が進みつつある1990年代の作品として、公の場の政治的意見も臆さないスーザン・サランドンをマーチ家の母親に据え、ジョーだけでなく四姉妹それぞれの人生についてもフォーカス。
・クリスチャン・ベイルがローリーを演じる。
◆監督:ジリアン・アームストロング
◆キャスト:
・ジョー(ウィノナ・ライダー)
・エイミー
 幼少期(キルスティン・ダンスト)
 少女期(サマンサ・マシス)
・メグ(トリーニ・アルバラード)
・ベス(クレア・ディンズ)
・ローリー(クリスチャン・ベイル)
・ベア教授(ガブリエル・バーン)
・ブルック(エリック・ストルツ)
・マーチ夫人(スーザン・サランドン)

❹『ストーリー・オブ・マイライフ/
  わたしの若草物語』(2019)
(第92回アカデミー賞:衣装デザイン賞)
・新しい視点として「ジョーとエイミーの人生の対比」「時系列を崩した多重構造」作品と仕上がっている。
◆監督:グレタ・ガーウィグ
◆キャスト :
・ジョー(シアーシャ・ローナン)
・エイミー(フローレンス・ピュー)
・メグ(エマ・ワトソン)
・ベス(エリザ・スカンレン)
・ローリー(ティモシー・シャラメ)
・ベア教授(ルイ・ガレル)
・ブルック(ジェームズ・ノートン)
・マーチ夫人(ローラ・ダーン)
・マーチ叔母(メリル・ストリープ)

③結び…本作の見処は?
◎: 現在の最旬俳優たちによる群像劇。各キャラクターがしっかりと反映されており、上映時間135分を退屈することなく、大変爽やかな余韻を残し鑑賞出来る。シアーシャ・ローナンは、スター登竜門の配役を見事に熱演。
○: 19世紀のアメリカ北部の過酷な生活を垣間見れる舞台セットや質素で気品のある衣装は時代考証の意味でも参考になる。
○: 鑑賞前は「イケてない邦題」と思っていたが、古典原作タイトルの訴求力の弱さや、人気若手俳優のアンサンブルを全面に出すための苦肉の策であることがわかる内容。
▲:「アメリカ版忠臣蔵!?」何度もリメイクが繰り返されるアメリカの国民的物語であるが、原作が刊行された19世紀に比べると「結婚に頼らない女性の社会進出」は前進。女性地位向上を描く題材として「若草物語」は役目を終えたような気がする。(「忠臣蔵」も「半沢直樹」で十分?)
▲:『レディ・バード』にて一躍注目を集める女優出身の新鋭監督グレタ・ガーウィグ。女性視点に立った演出は本作でも冴えるが、本作の時系列を崩したストーリー展開が消化出来ておらず、どの時代を描いているのかわかりづらい。複雑な構成の大作の監督は、まだ早いように思える。

④本作から得られる「人生の学び」
・自分を殺してまで、迎合することはない。

万人に愛される素敵な作品でしたが、男性視点で活かされる教訓は、見いだせませんでした。
女性視点でみると「結婚を人生のゴールにするな」かもしれません。(日本の今の若い世代に「結婚至上主義」のような感覚はあるのかな?)
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