ひろ

ROMA/ローマのひろのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.8
アルフォンソ・キュアロン監督・脚本・製作・編集によって製作された2018年のアメリカ/メキシコ合作映画

第75回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞
第91回アカデミー賞で外国語映画賞・監督賞・撮影賞を受賞した

1970年のメキシコシティのコロニア・ローマが舞台。そこで暮らす中流階級の家庭とその家政婦の日常を描いた作品

映画評論家から絶賛され、数々の映画賞も受賞した作品だが、「ゼロ・グラビティ」でもオスカーで監督賞を受賞しているキュアロン監督。ハリー・ポッターまで監督した彼からしたら、この作品は賞レースを獲るために作った感じはしない。彼が育ったメキシコシティを舞台にした半自伝的作品で、こういう映画を撮りたかったという監督の熱意が伝わってくる内容だ

全編モノクロだし、英語も使われていない。このような作品がオスカーで賞を受賞したことはない。しかもNetflix配給だから映画館での上映は少ない。それでも高い評価を得たのはすごいことだ。新しい時代がきた。モノクロって使いたがる人は大抵カッコつけなんだけど、この作品では時代的にも内容的にもモノクロの雰囲気がよく合っている。色にはたくさんの情報が込められているから、色がない方が内容に集中できる

夫婦間がうまくいっていない中流階級の夫婦。子供は4人。家政婦は2人。主人公のクレオは子供の面倒見もいいし、よく働く女の子。そんなクレオにも家族にもいろいろあります。人生は楽しいばかりじゃない。笑ってる時もあれば鳴いてる時もある。辛くても辛くても生きていく。萎れた花も水を差せばまた咲く。折れた骨は前より強くなる。人生は美しい。そんなキュアロン監督のメッセージが映像美と共に物語られる。特にジャケットにも使われている波打ち際のシーンは最高に美しいシーンだった

こういった賞レースのために限定劇場公開している作品への賛否はあると思う。スピルバーグが映画は映画館で観るものだという強い信念からNetflixを批判している気持ちはよく分かる。電子書籍より紙の本が好きだという感覚と似ている。でも面白いものは正義だというのもうなずける。名監督が好きなように撮った作品なんて観たいに決まっている。なんならスピルバーグにもNetflixで作品を作ってもらいたい。映画館で観る映画が最高であるのは揺るがないが、面白い作品が誕生するなら今後も目を瞑りましょう
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