きよぼん

あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIEのきよぼんのレビュー・感想・評価

4.4
時代を感じる作品。

港署の机の上に置かれた後ろがエイリアンみたいな馬鹿でかいブラウン管のモニタ。テロリストが使っている持ち運ぶの不便すぎるラップトップコンピュータ。

特にあのバカでかいモニタが使われたのは、自分の記憶ではwindows95が出た95年あたりから、液晶モニタやノートPCが事務仕事で使われる比率が上がってきた05年あたりのわずか10年くらいではなかろうか。ときどき映画でこういうモニタみると、あの時代の記憶が脳に直撃するようにハッキリと感じ取れる不思議。

初期のハードボイルドな感じは抑えめで、かなりのお笑い要素を含んだ本作。トオル(仲村トオル)もカオル(浅野温子)も普通の人のカケラもなくなり、ひたすら笑かしにくる変な人に振り切っている。これがあぶデカの全てじゃないんだよなあ・・と口うるさく言いたい一方で、このアクションとコメディ、緊張と緩和のバランスが、あぶない刑事のスタイルのひとつの完成形といえる。

当時は「ちょっと浮かれすぎでは?」と思ったけど、不景気で世相がだんだんと暗くなっていく時代、お客さんに向けてのサービスに徹した作品だと、今になっては思う。

時代のもうひとつの背景でいうと、「踊る大捜査線」路線の台頭もあった。目の肥えた視聴者とネットによる情報化の影響もあり、警察は正義の味方ではなくて官僚的な組織であり、そこで働く人はサラリーマンという現実を色濃く反映したものが主流となっていく。あぶない刑事のような所轄の刑事が殺人事件を自由に捜査し、拳銃をバンバン撃ちまくるようなドラマは時代遅れと笑われた。

みんな賢くなったような気がしていたけれど、し今になってみると、フィクションを楽しむ余裕をなくしていった時代だといえるのかもしれない。あの時代では気がつけなかった面白さを、2021年の今は素直に楽しめた。
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