まりぃくりすてぃ

他人の家のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

他人の家(2016年製作の映画)
3.0
絵画的に整ってる。俳優たちのお顔も、近景も遠景も。
戦争を間接的に。そういうストーリーのテリングが、ここではポップじゃない。画が強いわりに、各セリフの真意はわかりやすくないのだ。まるで “描写力に自信のある小説家が、登場人物の言動だけをわざとぶっきらぼうに上滑りさせてる” みたく。
色調がブルーグレイ(と樹木)主体だし、雨描写がやたら効いてるし、、この映画は、お地味さん。大人っぽいこと自体は全然いいが。
不穏さと、寒々しさと、疲れっぽさと、期待感。“小綺麗な部屋と調度品と綺麗な眺望を、綺麗すぎる人々から提供してもらったのはいいけど、その宿屋の誰にもかまってもらえず無聊” って感じの落ち着かない寒さだ。鑑賞者にとって。しかし、人物たちの感情はけっこう豊か。

そんなお地味なブルーグレイ映像美の中で、少年レオ役の美貌が私たちの母性本能を真っ先にくすぐるのだが、、、男見えするばかりの短髪女性イラ(サロメ・デムリア)が全体をちょこちょこ支配する。荒っぽい鉄女顔の彼女を私は好きになれなかった。じつはたいへんにエロいボディーを持つ。それがわかる終盤のぴっちり白ワンピ、の胸上部にハミ的段差。結局残念なセンスだった。
さて、その支配的彼女は、沈んでるブルーグレイの中で突如、口紅を使うのだが、ワンピとの相性からいっても展開的にも「真紅」が最適なのに、色があるのかないのかわからないようなベージュ系のスティックを唇に当てた。
こんなにも原色(特に暖色、とりわけ赤!)を避けたことの意味は、もちろん、「厭戦」である。もう戦いによる血なんて見たくないと願っていただろうアブハジアとグルジアの庶民のためにグルルジゼ監督は、血に通じるものを一切描き入れないという決意的な画作りをした。鮮やかな暖色は、彼らには、郷土の美味しい蜜柑の色だけで充分なのだろう。

平和はこれから整っていくだろうか。。。

[妖しいカチャカチャ館であるシネマピョンラに似合わない、あまりにも岩波ホールな作品。ノッペリしてて眠たくなるという意味でも。]