けーはち

雨の首ふり坂のけーはちのレビュー・感想・評価

雨の首ふり坂(2018年製作の映画)
3.7
原作:池波正太郎、制作:時代劇専門チャンネル×松竹。博徒の抗争に殺しを請け負う渡世人を描く股旅もの。要は江戸版ヤクザ・ヒットマン映画。武士は1人も登場せず客寄せトレンディ俳優の配役もない、ただ地味に泥臭く斬り合い、鮮血が散り腕は飛ぶハードボイルドいぶし銀の時代劇。中村梅雀が凄腕の渡世人を演じ、柔和で人格者然とした風貌と裏腹に、場数踏んで自信と気迫に満ちた殺陣が素晴らしい(もっとも渡世人っぽいのは弟分の大杉漣だが)。人生も終わりに近づき、後悔した男が最後に若者に何を残せるか。そして、彼の人生の幕を引きに来た男は、いったい何者か……皮肉な縁の巡り合わせが見所で、因果応報、劇中当人同士その因縁を知ってか知らずか解釈が分かれる結末、懐の深いドラマ性もあり、彼らの心の裡を思えば泣ける。音楽はジャズ~昭和歌謡をリスペクトするEGO-WRAPPIN'が担当。時代劇とはミスマッチな印象もあるが、軽快ながらも太いベースの躍動する音像は切った張ったの渡世に良く似合う。