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戦慄の絆のEyesworthのレビュー・感想・評価

戦慄の絆(1988年製作の映画)
4.5
【俺たちはいつでも二人で一つだった】

デヴィッド・クローネンバーグ監督の異色スリラー映画。

〈あらすじ〉
一卵性双生児の兄弟であるエリオットとビバリー。社交的で野心家の兄エリオットと、内向的で繊細な弟ビバリーはお互いに正反対の性格ながら、幼い頃から常に一緒に育ってきた。トロントで産婦人科医を開業した今も、2人の平穏な共同生活は続いていた。そんなある日、病院に女優のクレアという患者が現れる。クレアがエリオットとビバリーを同一人物だと勘違いしたことをきっかけに、バランスを保っていた2人の関係が崩れ始め…。

〈所感〉
クローネンバーグ監督作品では、『ザ・フライ』や『ヴィデオドローム』同様に人体の恐怖を扱った映画だが、この作品は少し方向がズレていて、双子の兄弟の目に見える"絆"に主眼を置いた異色の作品である。性格が真反対の二人を一人で演じたジェレミー・アイアンズに見事と言う他ない。てっきり本物の双子が演じているのではないかと思ったほとだ。「青春アミーゴ」の俺達はいつでも2人で1つだった〜地元じゃ負け知らず〜を地で行く存在である。ずっと二人で一つで共有していた身体がクレアという媒体を通じて自分の身体では無いような異物感に駆られてしまう。これを断ち切るために手術を施す。その結果は明らかにもかかわらず。赤い手術着が不気味だが、こんな衣装で手術されたら恐ろしくて患者がたまったもんじゃないだろう。あとオリジナルの手術器具が不気味ながら同時に何故かエロさも感じる。多分私が男で子宮というものに縁がなく他者感があるからだろう。それが女性にとっては悪魔より恐ろしい造形だというのに。切り裂かれる不安は外部にはなく、実は内部に潜んでいる。彼らにとって命同様の絆はカッターやナイフでは切れないが、自身が作った器具によって切り裂かれてしまうのも示唆的である。結局自己の不安を断ち切れるのは自己だけという暗示すら感じる。
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