天豆てんまめ

七つの会議の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

七つの会議(2018年製作の映画)
3.9
全編に渡って繰り広げられる演技合戦を堪能する映画。

どアップ、睨み合い、顔芸を堪能する「半沢直樹」の福澤監督特有の画角。

野村萬斎のやり過ぎかと思える奇妙さがたまらなく癖になる。

香川照之の既視感たっぷりの怒号と顔芸はそれでも引き込まれる。

及川光博の怯え、悶え、吐きの中間管理職の悲哀もどこか滑稽だ。 

藤森慎吾の軽薄で嫌らしい経理部担当がいいピンポイントになる。

朝倉あきの不器用で真っ直ぐな感じは演技慣れしてない素なのか。

鹿賀丈史のあまりに悪すぎる笑みと不気味さは圧倒的。

TVサイズでお茶の間の話題をさらう池井戸潤×福澤克雄のお得意な世界観の怒号とアップの応酬が映え、迫力溢れるエンタテインメントとなっている。

一体誰が黒幕なのか、野村萬斎扮する居眠り八角の本意は何か、最後までスリリングな緊迫感が途切れないサスペンス。

所々ミッチー、朝倉あき探偵気取りのコンビは、仕事忙しいんじゃないのか?と突っ込みたくなるけれどそこは息抜きと物語展開の促進になっている。

組織で生きる中で凄まじいプレッシャーで生きていると周りが見えなくなることもあるだろうし、会社の常識が全てになったり、上司の評価が全てになったり、いつの間にか自分自身という人間の意思や核、芯のようなものが見えなくなり、悪いとわかっていても自分を守り、会社を守るために不正に手を染める人は現実世界で後を絶たない。

でも、他人事ではない。身動きできない状況で、そんな選択にいつ自分が立たされるかわからない。そんな時自分は間違わずにいけないことはいけないといつでも貫けるだろうか。

萬斎扮する八角は一度会社に全てを捧げ、自己が呑み込まれ絶望をみた人間のその先の姿を見せてくれる。

いいものはいい、悪いものは悪い、勇気をもって貫くには、いつでも辞表を胸ポケットに忍ばせる覚悟が必要だろう。

出世しようがしまいが、自分が社会に対して貫く信念だけがハッキリしていれば、もっと人間シンプルになれる。

大きかろうと小さかろうと社会や組織で揉まれる私たちに勇気の底にあるものは何なのか、どうしたらその勇気を絞り出させてくれるのか、そんなヒントを感じさせてくれる快作だと思う。