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ライトハウスのRockoのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.9
●作品
1890年代、ニューイングランドの孤島で灯台と島の管理を行う2人の灯台守。熟練の灯台守役ウィレム・デフォーと未経験の新人ロバート・パティンソンの2人の極限状態から生まれる狂気や幻想を描いたA24モノクロホラー作品。

●監督&脚本
監督は先日レビュー済『ウィッチ』のロバート・エガース。脚本は兄弟のマックス・エガースとの共同脚本。

●映像
モノクロ&ほぼ正方形のクラシカルな演出。サイレント映画時代は1.33:1だったが、トーキー映画の出現で一時期はサウンドトラックによって画面が削られたために1.19:1なども使われた1920~30年代の画面アスペクト比。パープスト監督の『炭鉱』(1931)や同年のサイコスリラー先駆的作品と言われるフリッツ・ラング監督の『M』などを参考にしたとのこと。

●撮影&音楽
撮影監督と音楽は『ウィッチ』と同じジュアリン・ブラシュケとマーク・コーベン。
すべて一から70フィートの灯台タワーをも建設したセットでフィルム撮影。ロケ地カナダ。


●感想(鑑賞後専用。ネタバレあり)



最前列で観て大正解!

不安を煽る大音量の霧笛サウンド。キューブリックに影響受けているランティモスもよく使う同音の繰り返し。音楽の代わりに雨、風、波の音などで演出される不気味な不協和音が劇場で観ると身体に響く体感ホラーとも思える。
序盤で社会から隔絶された環境で意地悪デフォーからシンデレラのような扱いを受けるロバパティ。逃げ場のない環境での上下関係が現代にも通じるパワハラやモラハラのようで辛い。

監督、そのネタは既に森ヴァージョンで観ましたよ・・・という思いがよぎりながらもやはりタイトなスクリーンで醸し出される閉塞感とサウンドで独特の世界観に引きこまれ、モノクロゆえ暗くて室内がよく見えないのに部屋の汚さや臭いまでもがリアルに伝わって来る。泥なのか排泄物なのかも区別がつかない・・・わかります、観客に想像させる手法ですよね。(実際の撮影は照明がキツくて眩しく、スタッフは皆サングラスしてたそう)

そして2人の芝居がとてつもなく上手い。
ロバパティは『悪魔はいつもそこに』の変態牧師を上回る強烈なキャラクターで物凄い勢いのパティンパティンを披露。美ケツと共に。
中盤からの狂気は嵐の到来と共に凄まじい迫力で2人の関係が複雑になり、他人なのか同一人物なのか現実と幻想が入り乱れ、性描写やギリシャ神話のキャラクターがサブリミナル効果のように映し出される。

人間を惑わす存在として描かれる人魚セイレーン、デイヴィ・ジョーンズ(悪魔)がどうとかこうとか言ってる似非予言者のデフォーは海神プロテウス、肝臓を啄ばむ鷲(映画ではカモメ)の描写でロバパティはプロメテウス?となると夜中に肝臓が再生するから不死となる訳で死んでないんだよね???
外国でハンバーガー食べようとした瞬間にカモメに持って行かれて唇切ったことがあるので、カモメが恐ろしい鳥だということはよく知ってる。
ギリシャ神話の部分は監督自身が詳しい人に怒られそうとかインタビューで言っちゃってたので、あんまり深く考察しても意味が無いんだと思う。「着想を得た」が全て。
もう途中から何ワールドか訳わかんなくなっちゃってホラーというよりコメディにしか思えなくなってしまったw
実際にロブスター料理のくだりで劇場に笑いが起きたしw
観終わってすぐは凄い映画観ちゃったなぁ・・・と思ってたのに、何時間か経過したらダークコメディ部分の印象が強すぎてホラーを観たはずなのに余韻のコントロールを完全に失った。
『ウィッチ』の方が明確でストーリーが上手くまとまってたと思うんだよね。この作品は嫌いではないんだけど、目まぐるしく変わる後半は詰め込み過ぎた感が否めない。笑いが止まんないんだってw

よくわかんなかったけどA24だから最高!とか言いたくないのでスコアは抑え目。実際A24は個人的に当たりハズレが大きい。今回はアタリの方。色々書いたけど概ね楽しめた。
1回観ただけだと画面暗くて背景見逃しがちな上に字幕追ってしまうため、劇場鑑賞含む2回以上が必須な作品なのかも。
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