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洗骨のEegikのネタバレレビュー・内容・結末

洗骨(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます


2023/10/15(日) Primeレンタルで鑑賞

ポッドキャストのおたよりでお薦めされたので観た。

今年、いやここ数年観た邦画(実写)映画でいちばん良かった。
とても真面目な、でもコメディ・コント感も強い映画で、こういうのが自分はいちばん好きなんだろうなぁ~となった。ガレッジセールのゴリさんが監督だと見終わってから知ってびっくり。だからこんなにコントが上手いのか。ハイキングウォーキングの鈴木さんも名演していた。

粟国島は、調べたらこの映画が公開される直前の2018年12月末に一泊のひとり旅で訪れたことがあった。あの風景を懐かしみながら、東と西で生者の世界と死者の世界に分かれていることなど知らずに歩き回っていたので、数年経ってからまた学ばせてもらうこともあった。あのブランコはちょっと見覚えなかった。


信子おばさんが終始強すぎる。どれだけ頼りになるんだこのひとは。最高

失敗した父権性というか、情けない親父・中年男、という表象に弱いのかもしれない。感情移入しちゃう。さすがにこの映画のお父さん(信綱)は情けなさすぎるし、いい歳していまだにロマン主義みたいなところに浸っている(妻がいなくなった代わりに姉と娘(と孫)に救われる)のはどうなんだと呆れてしまうけれど。そういう人が子供や姉などに支えられて家長として立ち直る、ベタベタな話ですからね。

ダメなひとだけで構成された家族が再集結して、それでもなんとか《子孫》の系譜を、家族を繋いでいくはなし。めちゃくちゃ出生主義なんだけど、優子の妊娠意図に対して信子おばさんが「あんた危ない考えしてるね」とツッコんでくれたのがデカい。いちおう最終的には結婚が認められて、みんなに見守られて祝福されて生まれてくるとはいえ、根本的には優子が子供を欲したのは名古屋という慣れない土地で一人暮らす寂しさを埋めるために職場の上司(店長)を自分に繋ぎとめたかった、というかなりエゴイスティックで「危ない」=暴力的な意思があるので、出生主義礼賛映画ではあるんだけど、反生殖主義と読めなくもない要素もある。


優子の「にぃに」呼びがすごく温かくて泣ける。剛-優子といい、信子-信綱といい、きょうだいの深い絆の話でもあり、自分はそこに弱い。


沖縄の、さらに離島の粟国島の風習を題材とするということで、オリエンタリズムに陥る危うさは当然ある(監督は那覇市出身)が、この映画ゆいいつの《外》=ヤマトゥの人間であるハイキングウォーキングのあのキャラ造形のおかげでかなり良かったと思う。洗骨などの風習の基本的なところからいちいち質問しては素直なリアクションを返すことで鑑賞者と映画の橋渡しをする。「それって日本の法律に違反してませんか?」, 「ここって本当に日本ですか?」(「いちおう日本に入ってるよ」)など、沖縄と "日本" という政治的に複雑な背景の含意も入れ込むことに成功しているとみた。
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