anemone

サタデー・フィクションのanemoneのレビュー・感想・評価

サタデー・フィクション(2019年製作の映画)
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光と影の濃淡が恍惚とするほど美しいフィルム・ノワール。
窃視的なカットに滲む墨をぼかしたような灰色、一粒の涙に宿るダイヤモンドのような煌めき

ぼんやりとした夢うつつを白昼夢というのなら、この映画は黒昼夢とでも言おうか。
租界に佇む劇場、ジャズミュージックのほろ苦い子守唄にうっとり

コン・リーの煙越しに相手を見つめる眼差しが、とでもエロティックで切ない。
特に白めい
俳優陣が魅力的で、ハードボイルドかつ爽やかなイケおじばかり

そして、土曜日(サタデー)
"鎌倉を覚えている?
あなたの好きな山桜を"

諜報員でありながら、表の顔が古本屋であるフレデリックが営む古書店
ゴミの中に捨てられた"若きェルテルの悩み"トニーチェの言葉
租界の中を、まだ少年のような若い日本兵が歩いているのがリアルでとても良いのです。

租界まで侵略されていたことは、知らなかった。孤島であり、魔都上海の終わりと開戦
原作となった"上海"、"上海の夜"を読んでみたいと思う。

〜衣装語り〜
劇のダンスシーン、チャイナや西洋風のブラウスに紛れて、ボーダーカットソーを着ている人がちらほら
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