青二歳

金の鍵 ブラチーノの冒険の青二歳のレビュー・感想・評価

金の鍵 ブラチーノの冒険(1959年製作の映画)
4.4
ロシア版ピノキオというと真っ先にストラヴィンスキー作曲“ペトルーシュカ”?と思いますが、直球にピノキオまんまの作品があるようで…
ソ連時代58年製作、ロシア版ピノキオ“ブルチーノ”のアニメーション作品。翻案と言っても“ピノキオ”原作と大体同じというかパクr…げふんげふん。ロシアの子供たちは“ピノキオ”以上にこちらの児童文学に親しんでいるようです。
ただラスト、人形のブルチーノが人間にならないという点でオリジナリティがありますね。ここは確かに興味深い。人間になるのが即ち幸福とは限らないわけです。あくまでブルチーノは人形であるという事で見えてくるものがあります。
またブルチーノの冒険する森はロシアらしい空気感がある。ちゃんとロシアならではの世界観に消化されているというか。さらに言うと、劇中の人形劇がペトルーシュカを思わせる…いやそれはただのバレエ脳と否定しようとするも、やはりペトルーシュカにしか見えん。この道化人形を始め人形劇の人形たちが話の中心に置かれているのがいいですね。ブルチーノが道中出会うサブキャラは道化人形以外もみんな魅力的。フォーキン版でもベジャール版でも、ペトルーシュカを鑑賞した事がある方は特にロシアのかおりを感じるはず。
“オズの魔法使い”の例もあるし、ついパクリじゃんなんて思ってごめんなさい。執筆の経緯はパクリだろ!としか思えないけど、これはこれで立派な翻案です。面白かった。ブルチーノはピノキオのように人間にならんと苦しむ事はない。あるがままに人に愛され、人形は常に人とある。

アニメーションについて言えば、このころのソ連アニメはディズニーを強く意識しているので(日本も同じ頃東映がディズニーを意識して商業的長編アニメーションに手を伸ばす)、かなり丁寧に作り込んだ出来栄えです。リマスターして欲しいくらい。特に音源はもう少しどうにかならんか…ロシアアニメらしく音楽が洗練されているしバリエーション豊かで好きです。
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