CHEBUNBUN

マイ・エンタイア・ハイ・スクール・シンキング・イントゥー・ザ・シー(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.5
【サメ映画ファン必見!
沈む学校、始まるポセイドン・アドベンチャー!】
先日高円寺でひっそり行われた《コメディ文化映画祭》。ひっそりにしては『マネキン』なんて激レア大傑作コメディが上映されるなかなか憎いラインナップだった。

ブンブン、多忙につき足を運べなかったのだが、インスタグラムのフォロワーさんが本作を私にオススメしてきましたので、早速米国iTunesで借りて観ました。今の時代、オススメ映画を簡単に入手できるのはありがたい。

さて、本作は『パーティで女の子に話しかけるには』のイラストを手掛けたダッシュ・ショー監督作だ。”My Entire High School Sinking Into The Sea”という変わった題名、何かの隠喩かと思いきや直喩でした。

文字どおり、高校が海に沈み、『ポセイドン・アドベンチャー』ばりの大冒険を高校生がする作品です。雰囲気は『天才マックスの世界』『ナポレオン・ダイナマイト』なのに、容赦なく人が死にます。サメファンは耽溺するだろう、可愛らしくやる気のない子ザメが美女を無残にも食い荒らします。

こう聞くとタダのボンクラパニック映画だと思うかもしれない。ただ、スクールカーストを皮肉ったコメディとして観た時に、非常に奥深く、「なんで今までこんな作品がなかったのか?」と疑問を抱くほどの物語がありました。

まず、スクールカースト下位だった人は誰しも抱くであろう感情がそこにはあります。スクールカースト下位を脱したいという思い、そしてディザスターか何かでスクールカーストを転覆させたい思いだ。

主人公は2年生になったばかり、スクールカースト最下位から2年生になったことで何かが変わると思っているが、その甘い希望は無残にも打ち砕かれる。何も変わらないのだ。表に立とうが直ぐさま、ウォールフラワーへと追いやられてしまう。

そんな彼に降りかかる大災害。高校水没事件。先生やスクールカースト上位は次々と死んでいくのだ。なんと面白いことに、スクールカースト下位だからサメに狙われないことも発覚する。そして、食堂のおばちゃんをチートキャラとして使い、主人公は全然頑張らずに出口である、屋上、つまりはスクールカースト上位へ登りつめていくのだ。

よく、映画の中で成長しない主人公像は叩かれがちだ。しかし、ここまでスクールカースト下位の怨念をねじ込み、御都合主義を武器に「変わらないこと」へ執着していくと、それは映画の強みになる。

70分くらいの短いアニメですが、猛毒な大傑作でした。ダッシュ・ショー監督はいずれA24とがっつり組んで映画を作るでしょう。

今後追っていきたい映画監督である。
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