ゲッベルスの秘書のひとりだったポムゼルさんの語りをメインに、当時の記録映像を挟みながらナチスとドイツ国民の関係性に迫るドキュメンタリー。
「若い人たちは、『私ならそんな状況から逃げる』と言うけれど、逃げられないわ」と繰り返し言うポムゼルさんの言葉は、真実だと思った。
今の私たちが受けている教育と、かつてのドイツ国民が受けていた教育は違う。従順であること、素直であることを良しとされて育ったら、疑問を持たず、上の者の言うことを律儀に守る人間ができるに決まってる。大人になってからも考える力を身に付けることはできるかもしれないが、それも縁によるもので、個人の力でコントロールするのは難しい。
だからこそ、何かおかしいと思ったら声をあげることや、芸術などの形で問題提起すること、もしくは家族や友人と語り合うことが大切なんだと思う。それらの活動が積み重なれば、“疑問を持たない人”が疑問を持つきっかけになるかもしれないから。
ナチスの蛮行がなぜ起きたのか?を考える時、必ずハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」をセットで思い出すな。哲学は無駄なことじゃない。“考えること”は、人間が人間らしくあるために最も大切なものなんだ、と。