ハレ

彼が愛したケーキ職人のハレのレビュー・感想・評価

彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)
4.5
どうしても今のイスラエルの状況を考えてしまうから、こんなにも優しく温かな映画も生み出せるのかと複雑な気持ちを持ちながら鑑賞した。



ここから少しネタバレ。

ケーキ職人のトーマスは愛するオーレンの突然の死を知る。オーレンの面影を求め、彼の妻アナトのカフェで働くようになる。いつしか息子とも仲良くなり、アナトとは愛を交わすようになるが、でもそれはそこにオーレンの面影をたぐる行為のように思えるのだ。安息日にオーレンの母親の家へ招かれ、今は亡き息子の部屋を見せられる。その部屋にはなにがあったのだろう、、、母親はすべてを理解していてトーマスの頬を優しく撫でる。
「息子に会ったことは?」と訊かれた時に、トーマスがイエスと正直に答えていたら、母親と一緒に悲しみを分かち合えたでしょうに、、、

考えてみれば妻アナトだって辛かったし、事実を知った時の衝撃は大きいよね。かわいそう。

あらすじに二人(アナトとトーマス)が運命的に惹かれあうと書いてあるが、それは違うでしょ!

所々の場面で「ブロークバックマウンテン」を思い出してしまうわ。

色白でぽっちゃり、寡黙なトーマス役のティム・カルクオフは溢れ出る感情をあえて押さえた演技が素晴らしい。喪失と孤独を感じさせる青い目と、力強く粉をこねるたくましい背中がいい。
流れるピアノも美しく、いつまでもいつまでも余韻に浸っていたい作品だった。 
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