針

赤い天使の針のレビュー・感想・評価

赤い天使(1966年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦の大陸戦線に派遣された看護婦(若尾文子)の体験する生(=性)と死を描いた戦争映画兼ラブロマンス。

序盤の野戦病院での手術シーンがまず圧巻。満足な治療ができないため、手でも足でもバンバン切っていくしかない戦場の過酷さが強烈な印象を残します。完全に人=モノという悲惨な状況。

また、当時の軍隊はひどすぎる男社会でもあって、主人公が入院患者の男たちにレイプされてしまう冒頭はひどい……。ストーリーも、戦場で心身ともに傷ついた男たちにとっての「天使」に主人公がなるという点で、正直ちょっとエロマンガにありそうな話だなーという気はしました😶。
しかしそれが、つねに危険と隣合わせの戦場での出来事であり、男たちの被る死と苦痛が入念に描かれていることで、あやうくバランスが保たれてる感じが自分はしました🙂。エロスとタナトスの相克。

物語はとある軍医と主人公との交感を中心に展開します。
後半で場面を転換することで、ちゃんと飽きさせないつくりにしているところがいい感じ。終わりはあっさり。
ともあれ、主人公たちの姿を通して戦争の非人間性を浮かび上がらせる反戦映画にはなっていて、自分はそんなに嫌いじゃなかったです。

それとこの映画って顔のみをアップにするショットがほとんどなかったような。会話のシーンも場面全体をまとめて写した状態で進んでいって、切り返しとかもほぼなかった気がする。間違ってたらすみませんが。ゆえにこの映画の若尾文子の顔をあまり思い出せない……。
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