Mikiyoshi1986

欲望のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

欲望(1966年製作の映画)
4.5
7月30日はイタリア映画界の巨匠ミケランジェロ・アントニオーニ監督のちょうど没後10年目に当たります。

前作「赤い砂漠」で初のカラー映画を製作し、その次回作「BLOW-UP」はイギリスを舞台に初の英語映画に着手したアントニオーニ。

67年にパルムドールを受賞した本作は私が初めてアントニオーニに触れた作品でもあり、
これの印象で当初アントニオーニはイギリス人だと勘違いしていた思い出も。

身勝手で突発的で欲求不満な若き敏腕カメラマンをデヴィッド・ヘミングスが演じ、
当時ポップカルチャーの最先端を走っていたロンドンを舞台に、飽和と退廃にまみれた不条理劇を構築したアントニオーニの名作。

カメラを通して現実と向き合いながらも、せっせと虚構を作り上げて行くカメラマンの生業。
それはアントニオーニ自身にとっての共通項だとも云えます。
街には人間の作ったあらゆる人工物で溢れ返り、認識できる物証にだけ価値が与えられることが当たり前の現代。

そこである事件をきっかけに、人間の意識における"実存"と"実在"の曖昧さを投げ掛けます。

アントニオーニの観光者目線から60sロンドンの風景をオシャレに切り取り、気鋭な着眼点で"世界の中心"の今をシニカルに捉えた本作。
そんな陰鬱さと暗部の中に、人間の精神と本質を問いただそうとする気概は彼の一貫したテーマとも云えるでしょう。
Mikiyoshi1986

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