阪本嘉一好子

Un cuento chino(原題)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

Un cuento chino(原題)(2011年製作の映画)
4.8
すごい映画!だって、ジュン(Ignacio Huang)の話す北京語に一切、字幕がついていない。私にとっては、中国語のわからない主人公、ロベルト(リチャード・ダーリン)がスペン語のみで四苦八苦している様子により共感できる。

まずこの映画はブエノスアイレスだと字幕にでた。アルゼンチンやチリのスペイン語は馴染みがないが、ポルトガル語が混ざってきているんだと気づいた。確かにブラジルは目と鼻の先で、有名なイグアスの滝は国境にある。ブラジルは経済大国だから、影響力があるだろうし、両国の人々の行き来も多いだろう。

ところで、この映画はコメディ風だが、そこに焦点を当てるより、主人公のロベルトに焦点を当てたい。両親を早くなくして(母親はロベルトが生まれた時死亡し、父親は19歳の時死亡)、長く一人暮らしをしているせいか、彼の性格のせいか、ちょっと自閉症か、アスペルガー症候群のようなしょうがいを抱えているように見えるが?毎日23時ちょっと前になると目覚まし時計を見て23時丁度に、明かりを消す。金物屋を営んでいるから、釘の数が、箱の表示通りにあるか確認してなければ、問屋に文句を言って、この状態が何度が続くと一人で大声を出して怒り出す。客商売には全く不向きに感じる。彼と似たタイプの客の細かい注文に対して、心理を読み取れず、怒り出し追い返す

中国からの孤児、ジュンに我慢ができなくなったのは、母親の誕生日を(ロベルトの誕生日)毎年祝ってガラス細工を飾っていた棚が壊されたこと。戦争でイタリアから逃れてきた父親。その父親は考えられない驚くような新聞記事をスクラップブックに長く集めていた。そのブックに載せてあった最後の記事はロベルトがイギリス軍と戦って、銃を持っている記事だった。
これは、父親にとってショックだったろう。戦争を逃れて移民したのに、また、アルゼンチンで息子が銃を持って戦った。父親はジョックで死んだのか、自殺か何か明らかにされていないが、ベットから翌朝起きなかった。ロベルトは両親の死は彼の責任だと思って呵責に病んで、心を誰にも開けないんだと思う。この話をジュンにしたことで、彼の気持ちは軽くなった。

下記の会話が圧巻:

マリ『たいへんでしょう、スペイン語も話せないで暮らすんだから。
昨日、想像したよ。一人で中国にいることを。ひとりで、お金もなしで、中国語を話せないし、困った。でも、思ったんだ。彼はラッキー、あなた、ロベルトがいるから。それに、ジュンはものすごくラッキーだ。ロベルト、あなたに会えて。』

ロベルト『でも、自分にとって、対処するのが難しいものもあるんだよ。』

マリ『わかる。そうね、私にもチャンスをくれないから。
私は、スペイン語を話せるのに。愛してる、ロベルト。シンプルなこと。』

ロベルト『マリ、あなたは、私のことをほとんどしらない!』

マリ『ひとりぼっちで、怒りっぽくって、センサティブで、優しくて、、、、、勇気がある。』



中華人民国の大使館がジュンのメンドーザに住んでいるおじさんを見つけてくれてジュンは飛行機で飛ぶ。ロベルトはジュンとの生活から新しい人生を見出す。