第3逃亡者

秘密工作員: 敵地の行動規範の第3逃亡者のレビュー・感想・評価

3.0
内容的に面白くはありませんが、貴重だし有益なフィルムだと思います。何しろフォード自身がその身を晒して只ならぬ存在感を焼きつけていますし、教習ビデオみたいな感じとはいえ構図、カッティング、動きの出し方を見れば映画としか言いようがなく一流の演出術を堪能できます。例えば、工作員が売春宿の前を通りかかるシーンでの、画面手前からの女性の歩かせ方のような単純なうまさ(女性自体は魅力的とは言い難いのですが、瞬時に画面が色めき立つような動きの感覚)には感心します。手書きの地図のような可愛い画面もあり、また終わりの方に、工場の出口を意識させるショットが認められるのも興奮しました。
冒頭の、講師が机から腰を下ろす動作で画面が寄り、大佐の説明に代わるタイミングでアップに移行するという編集の的確なリズムは、「ファンタスティック・ミスター・フォックス」の時評で指摘されているようなフォード的な呼吸がまさにこれにあたるでしょう