オレオレ

ある少年の告白のオレオレのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
3.0
悪くはない、特に主人公ジャレッド(L.ヘッジズ)とその両親(N.キッドマンとR.クロウ)の演技のおかげで。
とはいえ、どっかで見た気がする話だし、テンポがイマイチ。

18歳のジャレッドはガールフレンドもいる普通の高校生。
父は牧師、母は専業主婦だがどちらも敬虔なクリスチャンで、ジャレッドも日曜日にはちゃんと両親と教会にいく。
自分の性的嗜好もあまり考えたことがなかったジャレッド。
大学でのひどい経験がきっかけとなり、自分は同性愛者だと意識することになるが、両親はそれは間違ったことであり、「矯正」させるため、自称セラピストのサイクス(J.エガートン)が経営する矯正施設にジャレッドを登録する。
ジャレッドも、クリスチャンの価値観で育てられてきたので、神が同性愛を認めないなら自分が変わるしかない、変われる!変わりたい!と思い(というか暗に誘導)、施設に入所するが・・・。

この矯正施設、バイブル至上主義で、神の力によって同性愛者を矯正できると信じているので、「神の名のもと」であれば、暴力的な指導や体罰(バイブルで打擲!)、人権侵害も厭わない。
ジャレッドの参加したのは日帰りプログラムなので、9時5時のあとは自宅や親の待つホテルに帰れるが、施設内ではトイレに行くのにも指導員が同行し、携帯電話禁止、個人的な日記や書き付けもすべて職員に見られてしまう。
ちなみに、この施設では、同性愛という罪は親族内の誰かの罪が輪廻転生しているから、という考え方なので、自分の親族にいるアル中、薬中、家庭内暴力、ギャングなどをあげつらわなければならない。母親にそんな親族がいるかどうかを問うジャレッドに対し、母親は、「そんなのいないわ。ウチはいたってノーマルよ」という。が、この「ノーマル」にジャレッドを押し込もうとしてるんだよ、あんたら・・・

この、「神の名において」暴行や理不尽が横行している施設の描写がちょっと長い。
もちろん、その間にジャレッドの違和感が積みあがっていくし、他の参加者が追い詰められていくんだが、ここをもう少し縮めてもいいんじゃないかと思った。
その分、残り25%で描かれる家族内でのバランスの変化と、それになんとか対応しようともがく3人の部分を重点化してほしかったなあ。

私はキリスト教に限らず、宗教に指針やよりどころを見つけることに批判的ではないが、それ一択!という考え方には同調しない。
あんたガチのクリスチャン?それはそれで結構、でも私は私、というスタンスをなんで誰もが持てないんだろうか。
まあたぶん、自分が信じている素晴らしいことを自分だけで独占しているのはよくない、誰かにも分けてあげなければ!という気持ちなんだろうなあ・・・
とくに、終末が来て、その信仰を持ってない人が死んじゃうとなると。
とはいえ、これはキリスト教やイスラムや仏教といった宗教だけでなく、資本主義、民主主義、炭水化物抜きダイエット、そういった主義主張にも当てはまり、それを信じている人が信じてない相手に押し付けるという構図がどこでも見られるんだと思うけど。

ニコマンがいう、「私は神を信じていて、神は私を愛している。同時に、私は自分の息子を愛しているだけ」。
これでいいじゃん、みんな!教義的に折り合いはつかないのかもしれないけど・・・・

不満を言えば、ジャレッドが全然サウス訛ってなかったこと!
まあ、邦題がゴミな点を考えれば、たいしたことではないが・・・。