すがり

とんかつDJアゲ太郎のすがりのレビュー・感想・評価

とんかつDJアゲ太郎(2020年製作の映画)
3.9
他の映画を観に行ったときに予告を観たとんかつDJアゲ太郎。
いやあ伊勢谷友介はかっこいいなあ、声が渋すぎだなあ、そんなことを思って帰宅したらニュースになってて驚いたとんかつDJアゲ太郎。
色々あったけど映画が観られてほっとしたとんかつDJアゲ太郎。
語感が良すぎて思わず言いたくなっちゃうとんかつDJアゲ太郎。

胸焼け。

内に潜む肉汁のように楽しみにしてました。
発想が面白すぎる。
とんかつとDJは同じなのかってそんなことあるかいと思いながらも納得してしまう謎の説得力。勢い。
そして「とんかつもフロアもアゲられる男になる」とかいう是非来年の書初めにしたい名台詞。
突拍子のなさ、意味の分からなさから面白く聞こえるのに、物語を通してみるとアゲ太郎の成長譚としてスポ根ばりの熱い筋道になっていて思わず涙腺が緩む。

というかずるいのよね。
こういう人間模様の見せ方されたらそりゃあ面白いし泣くしでこの点についてはピンポンに通づるところがある。

最初の失敗、敗北。そこに至ることをこちらには予感させながら滞りなく進む物語。
その能天気、あるいは拒絶。
そんな空白の心を「現場」の恐怖に埋め尽くされたとき、どん底の中から見え始める人と人を繋げる糸。
それを見せるための下地作りと起死回生の過程が丁寧で、こっちの感情をすんなりレールに乗せてくれる。
おかげで最後の舞台の頃には、底から見え始めた糸はすっかり手繰られて、開けた視界によって世界が広くなってる。その感覚をしっかり共有できる。
これだけのお膳立てをされればこっちにもいやが応でも火が通って、アゲられてしまって仕方がない。
サクッ、ホロッ、ジュワッですよ。


胸焼けしたと思ったけど、
とんかつ、またとんかつ食べたくなってきたね。
すがり

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