Jun55

ヴィクラムとヴェーダのJun55のレビュー・感想・評価

ヴィクラムとヴェーダ(2017年製作の映画)
4.5
アクション映画と銘打たれているのだが、これは哲学的な映画。
ある意味、インド的映画、と評することもできるのかもしれない。
個人的には好きなタイプ。
また、最後の最後まで展開が読めないストーリー、最後に向けての種明かし、これもインド映画らしく好きなところ。

何が哲学か。
善悪、正義、道徳というのは、誰がどのように決めるのか、判断するのか?
”多様な価値観を有する人々が共存する社会”の仕組み(法律、慣習、教育等)の中では、善悪、正義、道徳について白黒付けざるを得ない状況がある。
ただ、それは、社会の仕組みを悪用し、または意図しないまでも、不正義を正義とみなすこともできる不完全なもの。
きっと、多くがそれに気付かず、盲目的に社会の仕組みに従順しているのではないか。
これは、誰かが決めるものではなく、最後は、個々人の判断に委ねられ、それだからこそ、個々人のモラル、価値観が重要になる、ということなのだろう。
最後のシーンは、まさにそれを端的に示しているし、その完結性に脱帽するしかない。

夫婦監督ということもあり、女性の描き方も効果的。
男性中心のストーリー展開の中にも、その存在がスパイスのように効いてくる。

主役共演のMadhavan、Vijay Sethupathiの演技も素晴らしい。
Vijay Sethupathiは、やはり悪役での存在感が一番。
この映画で気が付いたのだが、彼の高い声が、悪役の不気味さを醸し出しいている。
また、後半につれて、悪玉が善玉のように見えてくるのも、彼の演技によるところが大きい。

インド映画18番のダンスはTasakku Tasakkuが最高!
https://www.youtube.com/watch?v=Rw3ePD8qLcc

この映画は、ヴェーターラ・パンチャヴィンシャティカー(屍鬼二十五話)という、インドの説話集に影響を受けており、それも、別途読んでみたい。
Jun55

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