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スヴェタのlpのレビュー・感想・評価

スヴェタ(2017年製作の映画)
4.0
第30回東京国際映画祭にて鑑賞。コンペのカザフスタン映画。

聾唖の女性を描いた作品。聾唖者が主人公ということで、数年前の「出演者は全員聾唖者、全編手話、字幕なし!」というあまりにも野心的かつ実験的な作風に、クライムサスペンスとしての面白さも兼ね備えた、聾学校を舞台にした驚くべき傑作の『ザ・トライブ』を思い出したけど、今作も存分に刺激的な映画だった!

前日に観た『ペット安楽死請負人』に続いて、今度はとんでもない悪女が主人公(タイトルロールのスヴェタ)でビックリ!「一体今年の東京国際映画祭のコンペはどうしたんだ!?」と思わずにいられなかった!スヴェタが「ある提案」を行うシーンは場内から自然と笑いが起こり、自分以外にも多くの観客が今作のエキセントリックさを楽しんでいたようで非常に良い雰囲気でした。

映画の方は「とんでもない奴だ!」と思いながら観ていると、最後には彼女が道を踏み外した(外さざるを得なかった)理由が分かる・・・と言うより、自然と事情を汲み取らされる展開が見事。「反則では?」という気も少ししたけど、とにかく映画に唸らされた!

ロングショットを多用する演出が今作の特徴。確かにロングショットが効果的に使われていると感じたシーンもあったけど、後半はやや冗長にも感じられた。その点はイマイチだった。

改めて数年前の『ザ・トライブ』と比較すると、今作は手話のやり取りにも字幕が付いており、「実験性」の面では劣ると感じた。ただその一方で、登場人物の考えを伝えることには成功しているため、今作は『ザ・トライブ』では直接観客に提示出来なかったものを示せたと思う。この点には賛辞を送りたい。

今作の受賞には期待していたし、自分だけでなく周囲やTwitterでの評判もすこぶる良かったのでグランプリ受賞もあるかと思ったけど、結果は残念ながら無冠!何か賞でも獲らない限り、今後の日本公開は難しいと感じていたので、この結果は本当に残念!何処かの配給会社が日本公開に踏み切ってくれることを期待します!
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