エミさん

スヴェタのエミさんのネタバレレビュー・内容・結末

スヴェタ(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

TIFFにて。
ヒューマン映画。
耳が不自由なため、健在な両親が居ながらも幼くして養護施設で育ったスヴェタ。大人になった今は、自分の住むところもあり、結婚して家族もいる。仕事は洋裁工場で作業長として働いている。
生きるためにどんな事でもやってきたスヴェタ。家族ができたらなお、その思いは強固になったようだ。

人生は次から次へと試練がやってくる。その度にスヴェタは、我々には思いもよらない言動で、問題を排除してしまう。その姿は保身が全てで、人の事情なんてお構いなしである。それがスヴェタの人生観というか、生き抜く術なんだということを目の当たりにすると、なんて強烈なキャラクターだろう…と驚愕する。ここまでエスカレートすると最早、『障害』という個性の域ではない。ハッキリ言ってスライミーとすら銘打ちたいくらい強烈である。

ラストシーン。孤児になった同僚の子供を施設に送り、スヴェタが助言をする。

「強くなるのよ。生きるために噛み付いたっていい」

このセリフがスヴェタの人生、全てを物語っている。なんて生きる事に貪欲な言葉であろうか! 自分のせいでその子が孤児になってしまったのに、全く悪びれるどころか、そんな助言をしてしまうなんて、なんて奴だ!?と私は怒り心頭。
彼女が今までやってきた行動への正当化と言うべきか、どうして彼女がこうなってしまったのか!?という説明も加味したシーンである。もちろん、先天性後天性の説明は特になかったけど、どっちにせよ、障害という個性を持って産まれてきたからであろう…。施設での生活は、それはそれはスヴェタにとって過酷だったことも容易に汲み取れる。でも、いくら何でも情緒に欠けるというか、俗にいう『空気を読む』という能力を誰も伸ばしてあげられなかった環境で育ってしまった結果が現状のスヴェタなので、決して、本人だけを責められないというのが、とてつもなく、心が痛くなったし、怒りにもかられてしまいました。

…さて、スヴェタという女性。どんな人で、いったい何をやらかしているのか…。是非、劇場でご覧になっていただきたいです。