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スパイダーマン:ファー・フロム・ホームのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.8
【マーベル・シネマのススメ】
SONY'sスパイダーマン・ユニバース⑧
マーベル・シネマティック・ユニバース㉓
〈MCU2〉
◆監督:
 ジョン・ワッツ
◆ゲスト大物俳優:
・ジェイク・ギレンホール
・J・K・シモンズ(カメオ)
◆ヴィラン:
 エレメンタルズ、ミステリオ
◆アベンジャーズ出演メンバー:
 ニック・フューリー
◆ポスト・クレジット・シーン:
・ニューヨーク市街の巨大ビジョンにデイリー・ビューグルのキャスター、J・ジョナ・ジェイムソンが映しだされ、ミステリオの遺した映像とともに、ピーター・パーカーがスパイダーマンであることを公に暴露。
・本作に登場するニック・フューリーの正体は、変身能力を持つスクラル人。フューリー本人はバカンス風の装いに身を包み、宇宙ステーションらしき場所の一角でくつろいでいた。

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・夏休みに高校の研修旅行でヨーロッパへ行くことになったピーターは、旅行中に思いを寄せるMJに告白しようと計画。最初の目的地であるベネチアに着いたピーターたちは水の都を満喫するが、そこに水を操るモンスターが出現。街は大混乱に陥るが、突如現れた謎のヒーロー、ミステリオが人々の危機を救う。
・さらに、ピーターの前には元「S.H.I.E.L.D.」長官でアベンジャーズを支えてきたニック・フューリーが現れ、ピーターをミステリオことベックに引き合わせる。ベックは、自分の世界を滅ぼした「エレメンタルズ」と呼ばれる自然の力を操る存在が、ピーターたちの世界にも現れたことを告げる…。

〈見処〉
①「鉄」の意志を引き継ぎ、
 真のヒーローへ——
・『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、マーベル・コミックのスーパーヒーロー「スパイダーマン」をベースに2019年に製作されたスーパーヒーロー映画。
・「スパイダーマン」の実写化作品としては第7作目。また、前作『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)に続き、「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)作品の23作目に該当する。
・本作は、全宇宙の生命体の半数が消失した『アベンジャーズ/エンドゲーム』後の世界を描いた最初の作品。スパイダーマンが数々のプレッシャーを受けながら、アイアンマンなきあと真のヒーローとして自立していく物語である。
・歴代スパイダーマン作品は、平均8億ドルと全般的に高い興行収入を得ているが、本作はスパイダーマン映画として初めて10億ドルを超える世界興行収入を記録、ソニーの歴代最高の興行収入作品となった。

②マルチバース
・「宇宙は単一(ユニ)だけではなく、複数(マルチ)の宇宙が存在する」…日本語では「多元宇宙論」「パラレルワールド」「並行世界」とも呼称される「マルチバース」。
・MCUの世界では『ドクター・ストレンジ』(2016)にて、エンシェント・ワンがマルチバースの存在を言及。また、ソニー・ピクチャーズが本作の前年に製作したアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』では、すでに複数世界のスパイダーマンが終結する物語を描いている。
・本作においては、ジェイク・ギレンホールが演じるミステリオが「ピーターたちが存在する世界線は"アース616"。自分は"アース833"からやってきた」と劇中発言。
・これらにより、本作公開前後に「MCUのマルチバース元年」と喧騒されたが、その背景には、マーベル親会社のディズニーによる20世紀フォックス買収後に「X-MENシリーズとの合流手段の選択肢」、ソニー・ピクチャーズにおいても「ソニーが映画化権利を保有する、約900に及ぶスパイダーマン関連キャラクターに完結した映画製作」と、両者の思惑を前進させる一手段が、「マルチバース」であったと推察される。
・本作公開後、スパイダーマンの次作品製作を巡って、マーベルとソニーが提携解消寸前の騒動まで発展した背景には、「マルチバース」理論により、両者の後続作品の世界観を調整しやすくした武器を手に入れたことも背景にあるはずだ。

③結び…本作の見処は?
◎: アイアンマンが遺したテクノロジーにて、スパイダースーツを新調するシーンは胸が熱くなる名場面。また、マーベルキャラ登場が控えめになった分、トム・ホランド演じるスパイダーマンの魅力が増している。
◎:『アベンジャーズ/エンドゲーム』のサノスによる空白の5年間を非常にサラっと描写。コメディタッチのスパイダーマンだから許され、『エンドゲーム』後の最初の作品が本作としたことに頷ける演出。
◎: スパイダーマン映画史上、最も甘酸っぱい!ゼンデイア扮する、新ヒロインMJとピーターの恋愛は、平凡でありつつも、大変微笑ましい。
○: ヴェネチア~プラハ~ベルリン~ロンドン~ニューヨーク。マーベル作品では珍しい、ヨーロッパを舞台に。ロケーションの素晴らしさを堪能出来る作品。
○: 本作のヴィラン「ミステリオ」との戦闘シーンはさながらVRゲームのようで見応えあり。
○: ポストクレジットに登場するJ・ジョナ・ジェイムソンは「サム・ライミ版」からJ・K・シモンズがまさかの再登板。
×: 局所ごとの見どころに溢れた作品であるが、総合的な評価が「傑作」に及ばないのは、本作に描かれる危機的状況の緊迫感に乏しく、物語としての魅力に弱い点だと思う。
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