リコリス

ベトナムを懐うのリコリスのレビュー・感想・評価

ベトナムを懐う(2017年製作の映画)
4.0
封切り時に雪が降らなそうなベトナムと雪景色の中に座る男のチラシを見た記憶。重い内容を想像していたが、割に語り口は軽い。

NYの冬の夜景にベタなベトナムの嘆きの旋律。更にベトナムの田園風景に、離れた故郷を懐かしむ現代風のベトナムポップス…と、終わり方は想像通り。

途中の祖父と孫娘の異文化世代対立、ボートピープルとして危険を犯して不法移民してきた、故郷を捨てた父。祖父母の受け入れを拒んだ母。ベトナム戦争の描写がほとんどないので、頭で妄想。(裕福なナム一家が南ベトナムから難民として出国?父が南ベトナム兵士だから妻と危険な出国で、農村の祖父母は残った?)

シリアスな描写、ユーモアのある会話もあり(老人となった二人は有名なコメディアンだそう…若い頃と雰囲気違い過ぎ(笑))、のどかで美しいベトナム農村の回想もあり。

ただ、父の出国の理由が今ひとつピンと来ず(ベトナムの人たちには、こういう事情?と想像出来るのだろうが)、いくら故郷に激しくアンビバレントな感情があっても、ルーツである故国の文化を完全に捨てて生活するだろうかと、少し疑問。

欧米は個で生きるから、高齢者はナーシングホーム。家父長制や家族主義、儒教的な価値観が残るアジアは高齢者も同居。日本は? と、世代対立より高齢者の扱いに目が行く。

日本に来たベトナム技能実習生の方々、日本に在留して定住しているベトナムの方々、ベトナムの都市部で暮らす方々が見たら、父の日記を読む前の孫娘の価値観をどう思うか、感想を聞きたい。
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