翔海

スリー・ビルボードの翔海のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.9
とても自分だけではこの痛みに耐えることができないから。

架空の田舎町ミズーリ州エビング。
愛娘をレイプの末に焼かれて殺害されるという事件があって以来、悲しみから立ち直れずにいる母ミルドレッドは事件現場付近に使われずに廃れた3つの広告板を見つける。すぐに広告会社に出向き、自ら広告を出したいと申し出る。
そこに掲げられた広告には赤い壁紙に黒い文字で書かれた事件が解決しないことへのミルドレッドから警察への悲痛な叫びであった。この奇怪な事件に地元メディアを取材をし、町中にこの看板のことを知らしめることは出来たが事件の解決の糸口は見えない。警察も事件解決に勤めているが解決には程遠かった。広告には警察署長であるウィロビーの名も書かれていてミルドレッドの過激な訴えに対して周りの町民からも反感を買うことになる。それでもミルドレッドは悲しみが癒えることはなく、警察や町民と対立ミルドレッドの行動はさらに過激になってゆく。

解決しない事件へ憤りを感じているは皆同じ。
ミルドレッドは解決に向かわない事件の責任を警察署長のウィロビーへ矛先を向けてしまっていたが、非力な彼女はそうすることしかできなかった。ウィロビーも持病に侵されて寿命もそう長くはなかったが、それでもミルドレッドのことを一市民として心配していた。ウィロビーの元で働くディクソンは感情的に行動してしまい、ウィロビー署長には迷惑をかけていたが警察としてあるべき正義感は誰よりも強かった。そのディクソンもウィロビーを亡くしてから自暴自棄になってしまい、警察で有るまじき行動をしてしまう。一つの事件がきっかけに変わってゆくミルドレッドの周りの変わってゆく環境の変化や人々の心情、魂の震えが伝わる。
翔海

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