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クワイエット・プレイスのeucalypsoのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.0
音を立てられないという、極限状況でのソリッド・シチュエーション・スリラー。粗削りだけど、作り手の強い意思を感じる。

エミリー・ブラント、強し。「ボーダーライン」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の流れで彼女を主演にしたことで、この映画は半ば担保されたようなもの(B級テイストも彼女の起用で緩和されてる?)。

時代感は曖昧。アナログ機材(父親が外界と接触する手段はモールス信号)や新聞はあるけど、スマホやパソコンはない。ポータブルオーディオプレイヤーはなぜかある。夫婦が聴いて踊るのは、ニール・ヤングの「ハーヴェスト・ムーン」。バック・トゥ・70〜80年代。時空間共に孤立してる。

冒頭のドラッグストアで、耳が聴こえない長女にズームすると、ブーンというローなハムノイズが聴こえて、周囲から切り離された彼女単独の世界にスパッと切り替わるのが良かった。

このエフェクトの扱いは途中からぞんざいになるけど、聴覚なし/あり、長女の世界/長女以外の世界がスイッチされる感覚をハードコアに突き詰めたら、より研ぎ澄まされた作品になったんじゃないかと。

後半は、クリーチャーと絡みまくる怪獣映画に(マイケル・ベイ製作だし)。

家に奴らが簡単に入ってこれるというのが肝。バリケードも防御手段もない(作れない)ところでの、無防備の接近戦。マットレスで地下室の入口を塞ぐ、破れかぶれさ。「クローバーフィールド」譲りの足の関節が曲がったクリーチャーは既視感あるけど、絶妙なサイズ感。

バスタブに隠れる。釘が足に刺さる(ここは想定外すぎて笑った)。水の中に浸かる。赤ん坊が泣く。コーンの沼に落ちる。花火を上げる。一個一個のフィジカルなイベントの数珠つなぎ。エミリーや長女の覚醒というか反撃は最後の最後まで持ち越される。ホラーというよりスリラー。この監督、たぶん、スピルバーグをリスペクトしてそう。

農地で家族が異星人と戦うミニマムな設定は「サイン」みたい。本作も一昔前のシャマランが作りそうな感じがある。アメリカの田舎〜サバービアって無尽蔵にネタを供給するドラえもんのポケットみたいだなぁと。
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