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ミスター・ノーバディのRockoのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
4.5
絶賛公開中ボブ・オデンカークの強烈なキャラクター『Mr.ノーバディ』に対して2009年ジャレッド・レト主演の『ミスター・ノーバディ』もかなり個性的な作品。どちらも「名もなき男」の話です。

ベルギーの鬼才ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が50億円にも及ぶ総製作費をかけ、さまざまな運命の選択をすることによって12通りの人生を生きるひとりの男を写し出したSFファンタジー映画。
あまりにもお金をかけ過ぎたために役者1人分を浮かそうと監督がカメオ出演しちゃいました笑(どのシーンかはコメント欄ネタバレで)

ジャレッド・レトが主人公に扮し、特殊メイクで若者から118歳の老人までをひとりで演じているところから既に変態映画なのですが、その男がさまざまな運命の選択をすることによって12通りの人生を生きるというパラレルワールド!
難解と感じるか面白いと感じるかは人それぞれ。私はとても面白かったです。
SF部分はドラマに組み込んであるので、さほど難しいとは感じず、むしろ混乱するのは何通りも繰り返される人生の方。
哲学的とも受け取れますが、恋愛シーンがとても素敵に描かれているのでそこだけでも十分楽しめます。

15才時のアンナ役ジュノー・テンプル(父親はピストルズのGod Save the Queenを始め数々の著名アーティストのMV監督ジュリアン・テンプル)がすっっっごい可愛くて、成長したアンナを『女は二度決断する』のダイアン・クルーガーが演じています。(ノーマン・リーダスと付き合う前)

この作品で流れる音楽と使い方が本当にいいんです。
例えばバディー・ホリーの『Everyday』を1つ目の美しいライフストーリーでは歌詞つきで流し、2通り目のやさぐれたコミカルタッチなシーンでは歌詞を無くすといったような場面を演出する音楽効果が憎い。オープニングから映像美と音楽にやられます。
この作品ではマグリット賞の最優秀オリジナル楽曲賞を受賞。
音楽担当は監督の兄であるギタリストのピエール・ヴァン・ドルマル。残念ながら2008年に癌で他界されたそうです。(自分でフランス語と英語訳した貴重な情報)
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督代表作『トト・ザ・ヒーロー』や『八日目』でも弟の映画音楽を担当していましたが、『ミスター・ノーバディ』が2009年公開ということは手掛けた映画音楽では遺作。
兄弟による監督と映画音楽のタッグも含めて、観ている側に何かを押し付けて来ることなく、何とも言えない余韻が残る非常に完成度の高い作品でした。
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