mingo

白い鳩のmingoのレビュー・感想・評価

白い鳩(1960年製作の映画)
4.6
ヴラーチルのデビュー作にして、瑞々しさと不穏さの両面性が人間のように表現された初期衝動、超絶傑作。
少ない台詞に詩的な映像が、我が身体と精神を駆け抜ける。
バルト海とプラハの街、遠く離れた場所をつなぐ鳩を通して描かれるささやかな心の交流に気持ちが安らぐ。難解な「マルケータ〜」よりも親しみやすく、オールタイムベスト級に心に染み渡った。

オープニングのあのモッコリした山ですでに異質すぎて笑った。
何よりバルト海のさざ波の音がプラハのシーンで聞こえるなど、映画表現によってふたつの街が近づくモンタージュの手法がグンバツに巧い。鏡や水面の反射を活かした精微なカットや、ビルの上空からみた猫の視線、からの切り替え、奇抜なアングルから生み出される心象的なショット、少年像の顔を削ぐカットなどの連続した不穏なイメージ、もう全てが強烈も強烈。これぞ映画の醍醐味。
そしてとりわけ評価したいのは画家と少年、それぞれが壁を乗り越えるっていうメッセージ性の明るさ。画家は版画的表現によりスランプを脱し、車椅子だった少年は最後のシーンで鳩を放して、その鳩の羽根が抜けて地上へと舞い落ちるのだが、少年が屋上からエレベーターに乗って地上でその羽根をキャッチするのが長回しで撮られている。そこからの地上へのパン。仲間たちとはしゃぐ少年、理想のラストカットである。希望そのもの。もっと多くの人に届いて欲しい、、、以外の何にもない2017年を締める傑作。凄い
mingo

mingo