これはなかなか出来の良いB級スリラーだった。特に雰囲気作りとか、主人公のキャラの造形なんかがきちんとできていて、どっぷりと作品世界に浸れる。
冒頭の、夜間タクシーの運転手として働いているシーンから入るあいたは、割とよくある設定かなと思った。が、ムエタイの選手というところは意外性がある。あと家族構成が複雑なあたりも。
この彼女をとりまく人間模様だけで、もう1本べつに映画を作れるんじゃないかと思うくらい、よく作り込まれていると思う。
一方で、クライムの部分がやや大味でご都合主義も垣間見られる。また犯人についても十分に掘り下げているとは言えない。このへんが惜しいのだが、それでも最後までおもしろく観られた。
個人的に興味深かったのは、ウィーンの裏側を描いていること。最初はどこが舞台なのかぜんぜんわからなかった。もしロケを現地でしているというなら、新市街でやっているのだろう。でも、この作品にはとても合っていてよかった。
[オリジナル音声+日本語字幕]2023/05/04 WATCHA