【まさに音楽の魔力】
イジー・トルンカ初期のパペットアニメ短編。記憶が曖昧だが、一度見ていたような?
“音痴のミュージックボックス”を奏でる旅芸人の物語。当然ウケない。だから儲からない。
え、これがどうタイトルと絡むの?…と思ったら…ナルホド!
チェコアニメの巨人は初期から巨人だった。主舞台にたどり着いてからが少しダレるが、子供にもわかり易く、との配慮かも。それ以外は惹き込まれ、堅実な巧さに唸りました。
何より、パペットの演技力がスゴイんですよね。主人公なんて、ちゃんと人としての性格まで伝わってくる。アイドルみたいな役者で、これに勝てる人、どれくらい居るだろうか?
あと、当然ではあるが各カットに必要な舞台、背景を適切に作り込んでいる。CGではない手作りの美術を見るだけで感心してしまうし、現代と違う世界観に、自然とワクワクする。
お話は、人として何が大切か、キモでしっかり伝わるのがいい。仕事は勿論、できる方がいいが、それより他人を思いやれるかが優先だ、と仕事のできない主人公が教えてくれる。
そういう彼を、子供が思いやることも、映画として大切な配置ですね。
前のサイトで粘着された、仕事自慢ばかりの自称プロによる人でなし行為に辟易したので、ネットの交流でも同じことだな、と改めて実感しました。
音楽の扱いには、幾つかの意味を込め含みもあって、想像で遊べる余白がある。主人公は、音楽箱のネジを巻くだけで演奏家ではない、というのがポイントですね。音楽とは心にやさしいだけではなく、人を強制的に踊らせるものでもある。大人が見ても面白い捉え方だ。
悪魔の悪魔感も、パペットアニメらしさに満ちたつくりで、禍々と楽しい!
で、異様な緊迫感で盛り上がる終盤はもしや『エクソシスト』の元ネタかと思った!www
最後のオチは、ハッピーエンドなのかビミョーなところがまた、ちょい深な余韻です。
古く短い子供向け映画だが、ダラダラ長いだけの、ChatGPTが考えたようなヤツを見せられるよりずうっと価値的で、知的な体験となりますね。改めてトルンカ、スゲエ!
<2023.5.24記>