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五人の斥候兵のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

五人の斥候兵(1938年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

38年製作、田坂具隆監督による日中戦争下の日本軍を描いた、日活製作の戦意高揚風の映画。『土と兵隊』と共に代表作と云われています。

製作時期としては、満州事変の7年後、検閲が始める39年の一年前位に公開された映画です。

以下は物語。

日中戦争、原野にある前線基地。
上官の死亡で、最前線で指揮を取る事となった岡田中尉。200名中、残るは80名。

兵士たちには束の間の休息。家鴨を捕まえ、西瓜を見つけ、皆んなで食べる。負傷兵が病院へ送られ、煙草の配給に喜ぶ。
中尉は日誌に全てを書き残す事で、死への恐怖から逃れている。

突撃を前に、藤本軍曹と四名の部下が斥候役として、敵陣の偵察へ行く。川を歩き、敵の目を逃れ、トーチカを発見し、戻ろうとした時、三方から敵の攻撃を受け、部隊はバラバラになる。隊長の藤本だけが予定を2時間超えて帰還。暫く後に、中村と一名が帰還するも、中村は木口一等兵のヘルメットを持って帰っただけだった。責任を感じる藤本軍曹。中村は捜索に出たいと隊長に申し出る。

岡田は本部への報告に、藤本は死亡と推測されると記すが、翌朝まだ暗い中、負傷した木口が帰還。差し出されるご飯、汁に涙が止まらない木口。皆んなで『君が代を』歌い喜ぶ兵士たち。

しかし、喜びも束の間、伝令役が突撃命令を伝える。岡田中尉は部下80名を招集、中には木口もいる。『海行かば』がしみじみと流れる中、一行は行進、原野へ消えていく---------

淡々と描く戦場のリアル、兵士たちの日常は特筆ものです。キューブリック監督のデビュー作『恐怖と欲望』は本作のパクリの様にも思えてしまいます。

田坂監督はこの後、露骨な戦意高揚映画を撮り、そして、広島で被爆する数奇な運命を辿ります。

敵の中国兵の姿を殆ど映さず、最前線のつらさが描かれます。国歌を斉唱の戦意高揚的な意味合いもありますが、このウェット感は戦意高揚とは異なるベクトルの様にも思えます。
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