いみ

冬の旅のいみのネタバレレビュー・内容・結末

冬の旅(1985年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

自由と孤独がテーマと岨手由貴子監督がおっしゃっていたがまさにそう。
自由ってなんだろ…とずっと考えてしまう映画だった。
劇中の彼女はとにかく汚い。
缶詰めを手でむさぼり汚れた手はズボンで拭く。
鼻水が出れば手でかみぺっぺと空を切る。
酒を飲んで草を吸いすぎて嘔吐する。何日も風呂には入らない(入れないのではなく入らない感じ)。
周りの人からの証言全てに「汚い」「臭い」があったから相当だろう。しかも季節は冬、、、相当だろう(2回目)。
周りに迷惑をかけている意識はないだろうが、結果的にそうなっている。
食べ物がなくなると盗みを働くし、親切にしてくれた人に礼もせず笑顔もみせない。
「楽して生きたいの」と彼女は言いそれを本当に体現していた。彼女は自由だ。とてつもなく。
自由でいることってこんなにも汚くて迷惑なことなんだと気付く。
自由って悪なのかも?と思ってしまった。
誰にも迷惑を掛けず自由でいるには無人島に行くしかないかもしれない。

最後までモナの旅の理由は明らかにならない。
畑で働く男が死んでいるモナを発見するところから始まり、火事で荷物をなくして祭りでワインをかけられて畑でつまづき泣いて凍死するところが最後。
希望がない。
ただ現実を写している映画。ドキュメンタリーのような映画を得意とする監督だそう。まさにそれだった。

印象的だったのがラストシーンの彼女の涙。
初めて彼女の素が見えた気がして胸が苦しくなった。自由であることはとても孤独。
彼女だって一人で生まれて一人で生きてきたわけじゃないんだ。

教訓も感じた。
「楽して生きる」は、私も全くの同意なんだけどそんなのダメだよなってこと。
みんなそれやってたら、みんなモナのようだったら…考えるだけでゾッとする。

だからこそすごく思った。
モナが凍死していなくてギリギリで助けられていたら彼女の旅は終わっていて月並みだけど働いて生きる選択を選んでいたかもしれないし、会いたい人にまた会えていたのかも 悔しいな と。
でもそんなエンディングで終わらないところがいいんだろうな。
さあ、これを見てあなたはどう思いましたか?
考えてください。たくさん考えてください。
監督がそう言ってる気がする。
いみ

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