ボナペティ男

フェアリー・オブ・キングダムのボナペティ男のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

 全世界のベトナム版シンデレラ映画が観たい人にオススメできそう。

◆実父を亡くしたタム(ファム・ハ・ビー)は、継母と義妹からの仕打ちに耐えながら日々を過ごしていた。ある日、皇太子が妃を探すために宴を開くことを知り、華やかな宴を夢見て参加しようとするタムであったが、継母らによって邪魔をされてしまう。そこへ“妖精の王様”が現れると、彼女に華やかな衣装と馬を与えた。喜び宮殿へ向かうタムであったが、途中靴を落としてしまう。
 “皇太子(アイザック)”は病床に伏せる父に代わり、国を統べようと努めていた。ある日、長官“タオ・ハク”の進言から妃を見つけざるを得なくなる。自由に妃も選べない状況に苛立つ皇太子は、たまたま拾った靴に運命を託す。その靴をぴったり履けたものを妃にしようと決めるのだった。

 全てにおいてぶっ飛んだストーリー。最初の靴のサイズが合えばいいってのが飛んでる。それ以降がずっと御都合主義でできた展開だし、割に訳がわからない。脳みそは使わないで、ありのままを受け入れるしかない。そして、予想以上にスケールのでかい話に気づいたら虜になっちゃう。とかは、ないかも。
 シンデレラ風ストーリーから、長官が王国を乗っ取ろうとする陰謀、隣国との戦、輪廻転生、SF、2大モンスター・バトル。圧倒される重厚さ。ジャンルの闇鍋だ!

 VFXは浮いている部分も多くて、違和感がなくはない。ただ城? 王宮? それら周辺のCGは丁寧だったし、別世界感がしっかりあってグッド。最終盤のB級モンスターバトル・アニメーションは笑ってしまうけれど、ベトナムの気合いを感じる。
 長官が「人間になりたい」とベム宜しくな欲望でいろいろやるんだけれど、動機がわからん。なんで人間になりたいんだろう。見落としたのか……。しかも、ヌメヌメ系のキモ・エイリアン・タイプの見た目。皇太子も負けじと獣人化する。長官が人間になるために飲み込む筈の「何か」を皇太子が飲み込むとライオン丸みたいになるのはどうなんだ。同じ見た目にしてやれよ。そういうところだぞ。顔がいいと変身しても格好いいとか萎えちゃう。ただ、変身するところで『ブラッディロア』を想起してテンション上がった。

 ワイヤー使いまくりの、絶妙なVFXを盛り込んだアクションはとってもよかった。
 戦のシーンは熱い。全軍突撃的展開はちょっと胸が熱くなる。壮大なBGMの中、切り立った岩山に囲まれた盆地での白兵戦もよかったし、終盤で長官追い詰めに宮殿に攻め入るところとかもいい。皇太子やらメイン・キャラクターを引き立たせるように撮られていて、無双感も十分で非常に爽快。ちゃんとアクションとして楽しめた。
 それに対して背景のモブが非常にやる気がない。棒立ちチャンバラ久しぶりに見た。チャンバラですらなかった。しかも敵味方全員倒れて終わってるのやばい。全員ノー・コンテスト笑える。

 俺たちがこの国を守るぜ! 見守ってくれよ、父さん! みたいなオチは悪くなかった。

 タムが皇太子に刺繍を見せながら「高麗ウグイスの番は、例えメスに先立たれても、オスは生涯別の伴侶を作らない」という旨の話をして、痛く感銘を受けたの的なことを言ってから、「でも、殿下は次の伴侶を見つけてね」と言う。会話の前後関係くちゃくちゃだし、情緒不安定だし、部屋とYシャツと私みたいな怖さある。この流れが一番面白かった。

 ファンタジック・ベトナム・戦国・アクション映画。何にせよヴェロニカ・グゥが頭抜けて美しいってどうなの? 最高だ。
ボナペティ男

ボナペティ男