藻類デスモデスムス属

敗け犬の大いなる煩悩の藻類デスモデスムス属のレビュー・感想・評価

敗け犬の大いなる煩悩(2017年製作の映画)
4.5
負け犬は「鼻」が良いのです。リン・イーパイをはじめ見た時、カマイタチかなって思ったら、負け犬でした。俺が売れないのは社会が悪い、努力を怠り、酒を飲み、平凡な人生。かつて恋したマドンナの結婚式では、見栄を張り、空回り。口煩い妻から逃げ出せば棒に当たるが如く、学生時代にタイムスリップ。タイムスリップ!定番なんですけれども!思わぬ番狂わせのチャンスに、鼻息荒く奮闘を開始するイーパイ。目糞を笑う鼻糞ではなく、糞を鼻で笑う人気者になる為に。大人になっても出来の違いを鼻にかける、優等生の鼻っ柱をへし折る為に。鼻が胡座をかいた幼馴染の花よりも、鼻筋の通った学校一の華を射止める為に。かつて自分を負け犬に仕立て上げた世界の鼻を明かすように、快進撃を続けます。2回目の1999年、彼は当時未だ知られていない曲を知っているのです。スターダムを駆け上がり、鼻の下をのばし、小鼻を蠢かすと。寄り集まってくる、鼻を鳴らす人、鼻を高くする人、鼻息を窺う人。映画館で上品ぶった結果、鼻から笑いが漏れてしまう人々、つまり、観客。しかし、本当に必要な鼻が、欠けている気がするのはなぜ?___鼻は顔のセンターで立っています、鼻は「自」の象徴、というか「自」が鼻の象形です。芥川龍之介の「鼻」が面白いのは、それが「口」や「耳」ではなく「鼻」だから。小さい頃、鼻の穴が大きくなるのを恐れて、鼻を洗濯バサミで挟んだこともありましたね。いや、これは関係のない、個人的な思い出話。とにかく鼻はよく知っているはずなんです、本当の自分の気持ちを。ほら鼻*鼻も、「あーよかったな、あなたがいて」って歌ってるじゃないですか。それもまた、定番なんですけれども。そもそもこの映画、リメイクなんですけれども。99%の笑いと1%の涙なんて、繰り返される鼻水注意報でありまして。どうしても唄いたくなってしまう鼻唄のようなものでありまして。やっぱり、負け犬の「鼻」が好いのです。リン・イーパイが好きになるのです。